「お客は神様ではない」の張り紙に賛否。他店の声「もう少し冗談っぽく」「最後は客のマナー」
生ビールを頼む時に、頼み方で値段が上下する趣旨の張り紙をした店舗が登場し、ネットを中心に話題となっている。都内の『大衆和牛酒場 コンロ家』3店舗では、380円で提供する生ビールを「すいません。生一つください」なら定価の380円で、「生一つ持ってきて」は500円、「おい、生ビール」と頼めば1000円とする張り紙を掲示。さらに「お客様は神様ではありません」「当店のスタッフはお客様の奴隷ではありません」と書かれている。
運営する株式会社頼富商會ではメディアの取材に対して「ジョークツール」として、実際に定価を超える金額は請求をしていないという。しかしこの張り紙は「飲食店と客のコミュニケーションはどうあるべきか」というセンシティブな問題について、改めて考える契機となった。実際に飲食店の現場の声を聞くと、意外な声が返って来た。
当該店舗は「ジョークツール」、ネットは賛否両論
ネットで話題になった問題は、日本テレビ系のニュースでも扱われた。スタッフが実際に「おい、生ビール」と頼み、会計をすると実際に請求された金額は380円。この点について「ジョークが効いた張り紙でお客さんに楽しんでもらいながら、従業員のストレスも減らしたいと考えているそうです」と紹介されている。
また、別の取材で株式会社頼富商會の副社長は、仕事上の取引の場合、当たり前のように敬語が使われるのに飲食の世界では全く使われないこと、面識のない人にいきなり「おい、生ビール」と言われて、いい気持ちにならないという点を指摘。お互いフランクな関係になるまで、相互に敬語を使いませんかという一種の提案であることを強調した。
一連の経緯についてネットでは様々な声が寄せられている。
「いいね 客層が良くなるなら」
「これでいいんだよ。片膝つく接客なんて明らかにやり過ぎ」
賛同する声がある一方で、疑問や反発の声もある。
「丁寧に頼んでも別に安くならないし、客にデメリットしかない」
「嫌な客を追い出したいのに普通の客も逃げてしまいそう」
他の飲食店はこの張り紙をどう見る?
この張り紙について他の飲食店はどのような感想を持っているのか? 東京・恵比寿の人気居酒屋『おじんじょ』を運営する株式会社5waykitchenの高丸聖次社長は「冗談と本気の真ん中、(店にとって)『お守り』みたいなものじゃないですか」と、張り紙の性質を分析しつつ「センスの問題なのでしょうが、もう少し冗談っぽく、デザインなどで工夫すればいいと思いますね」と言う。
確かに張り紙を見る限り、しっかりとした字体でイラストもなく、店舗からの正式な告知のように見える。しかも「神様ではありません」「奴隷ではありません」という文字が赤文字で強調されており、本気度を感じさせる。
さらに、『コンロ家』では「ジョークツール」という説明と同時に、取材に対して従業員のストレス軽減や「相互に敬語を使いませんか」という一種の提案という趣旨のコメントもしており、全てがジョークというわけではなさそうなので、話が複雑になる。
この点、歌手をしつつ新宿ゴールデン街でスナック『夜間飛行』を経営するギャランティーク和恵さんは、自らの考えとの違いを口にする。
「横柄な口のきき方をするくらい相手に思いやりを持てないお客さんに対して、いちいちその人を正すほどワタシも思い入れはありませんし、『可哀想な人だな』と憐れむくらいでいいのではないでしょうか。そこを、わざわざああいう張り紙をして、説教するように正そうとするのは、正直野暮だな、と思います」。