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「お客は神様ではない」の張り紙に賛否。他店の声「もう少し冗談っぽく」「最後は客のマナー」

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スナック『夜間飛行』を経営するギャランティーク和恵さん

張り紙だけでなく、店舗運営の根幹部分の対応も大事

今回の張り紙の問題点について、高丸氏は経営者ならではの視点で次のように指摘する。

「この張り紙は、目の前で起きている事態に対する対応です。そういうことをしなくて済むような、根幹部分の対応も大事だと思います。店をオープンして、自分としてはどういう店にしたいのか、どういうお客さんに来ていただきたいのか。時間をかけてコツコツと店を育てていく、お客さんとの信頼関係を構築していくことが大切ではないでしょうか」。

もう1点、忘れてはならないのは「おい、生ビール」と居丈高に注文する客に、他の客も不快さを感じるという点である。店対客だけの問題ではなく、客対客の問題であるという点を考えて店作りをすべきというのが高丸氏の考え。この点はコミュニケーションを最大の売りにするスナックという業態はより深刻な問題で、ギャランティーク和恵氏のその点に対する考えは明確である。

「周りのお客さんを不快にさせたり、店内の器物を雑に扱ったり、あからさまに文句をつけてきたりした場合は、怒りますし、最悪帰らせます」と毅然とした態度で応じるという。このことは同氏へのインタビューで語られた、店舗という限られたスペースの中を快適な場とする「空間を守る」という発想に基づくのは明らかである。

高丸氏が経営する『おじんじょ』でも似たような例があった。一部の客がしつこく「ナンパ」して女性客があからさまに迷惑がっているという状況が発生。店員に止めに入らせたのである。「お客さんが迷惑しているから、それを止めるのは店として当然です。それに対して店が何もしなかったら、その行為を黙認、あるいは助長しているととられ、せっかく来てくださったお客さん(女性客)に対して失礼ですから」と理由を説明する。

ナンパほどではないにしても、一部の客の横柄な態度は、他の客に迷惑をかけているのであり、そのような事態が起きないようにすることは店のサービスの一環で、店づくりの大事な要素ということに結びつく。

Photo by iStock.com/everydayAnalog

スナックと居酒屋の違い、最後はお客さん側のマナーの向上に期待

この点、スナックと居酒屋の違いを明らかにするギャランティーク和恵氏の話が興味深い。「スナックの場合は、横柄な態度をとる人にも二通りあります。1つは入った店に何の関心もなく、ただ飲める場所としか考えていない人。もう1つは店やママに興味があるのに、性格として横柄になってしまう人。後者の場合、最初はこちらも嫌になりますが、向こうも懲りずに店に来ることで徐々に人柄が見えてきて、好きになることもあります(笑)。普通の人間関係と同じです」。

しかし、そのような人間関係を居酒屋に求めるのは無理がある。「居酒屋でも、チェーン店などになってくると、そういうウエットな人間関係はほとんどないでしょう。スタッフに横柄な態度を取る方も多くいると思います。しかし注文の仕方が少しぐらい乱暴という程度で、出禁にするわけにもいきませんから、最後はお客さん側のマナーの向上を望むしかありません」。

最後はお客さんのモラルの部分に帰着するのは、事案の性質からして当然なのかもしれない。店舗の努力に応えられるようにすることで、結局は楽しい時間を過ごすという自分の身に戻ってくることである点を、客が少しでも意識すれば状況は変わるのではないだろうか。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/