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外食業界の未来を創る、ロイヤルホールディングスの挑戦。新店『大江戸てんや』の狙いは?

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モバイル決済の方法は従業員が丁寧に教えてくれる。写真は『GTP』のもの

ユニバーサルな環境作りのために

10月2日にオープンした『大江戸てんや』は、『GTP』での研究・成果をベースに、さらなる働き方改革を目指している。なかでも注力したのが「お客様にも従業員にもやさしいユニバーサルな環境作り」だ。

というのも、同店は既存の『天丼てんや 浅草雷門店』を転換した店舗で、国内外の観光客が多い浅草という土地柄、もともと客層は訪日外国人客が9割。当時からボーダレス化の重要性を感じていたようだ。

「以前の決済手段は、日本円か交通系電子マネーのみでした。最近はクレジットカード決済やモバイル決済のニーズも高く、また、訪日客には通常店舗と同じメニューでは少々わかりにくく、注文がしづらいということもございました。さらに働くスタッフとして外国人のパート・アルバイトの方が増えてきている中で、調理(特にオーダー伝票の読み取り)、接客(特にオーダー受注・会計)で課題をもっておりました」

こうした課題を解決するために、クレジットカード、電子マネー、中国系モバイル決済対応のキャッシュレス化はニーズが高いと考えたという。また、4か国語(日本語、英語、中国語、韓国語)に対応する多言語型の注文用タブレット、調理する食材をイラストで示し、1品の天丼の食材数も表示されるキッチンディスプレイを厨房に設置。シニア・外国人のスタッフにもわかりやすいオペレーションシステムに改善した。さらに、セルフサービスであることも従業員にとっては業務軽減につながっているという。

『大江戸てんや 浅草雷門店』のメニュー。訪日外国人客を意識したメニュー構成になっている

メニュー構成も特別仕様に

メニューもひと工夫。通常の『天丼てんや』とは違い、天丼は松・竹・梅の天丼と野菜天丼の4種類、串天スタイルの天ぷら(テイクアウト専用)など、訪日外国人客にもわかりやすい仕様にした。

「ますます増える外国人のお客様にとっても、そして従業員にとっても、ユニバーサルな環境(多言語対応、決済手段、商品構成、ネット環境、イラストによるディスプレイなど)を整えるためのチャレンジ店舗という位置づけです」

時代を捉えながら、そのニーズに合った店づくりにチャレンジしていく……。きっとこうした挑戦が、外食業界の未来を創っていくのだろう。最後に『大江戸てんや』の狙いをわかりやすく解説していただいたので紹介したい。

■店舗業務のうち“作業系”や暗記が必要な仕事をIT化し、従業員が調理や接客ツール(ハンディターミナル・現金)に向かう負担を軽減。そうすることで、1品の料理の品質を向上させ、またお客様と向き合う時間を増やし、目配り・心配りに喜んでいただける接客でおもてなしをする。

■ユニバーサルなキッチンオペレーションを実現して天ぷらの品質を向上させる。

■シニアや外国人スタッフなど多様な人たちがより働きやすいと感じる環境をつくる。また、教育にかかる時間を短縮し、さらに活躍していただける環境をつくる。

■今後、ますます生産年齢人口の減少が加速する中、すべてのステークホルダーの満足度をあげていくビジネスモデルを考え、企業経営におけるユニバーサルデザインを構築していくために様々なチャレンジを行う。

少子高齢化による生産労働人口の減少や市場の変化、人件費の高騰など、外食業界を取りまく環境が厳しくなっている昨今、大手企業であるロイヤルホールディングスが行っている有意義な取り組みに学ぶところは多い。机上の空論ではない「働き方改革」をぜひ参考にして欲しい。

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逆井マリ

ライター: 逆井マリ

フリーライター。音楽、アニメ、ゲーム、グルメ、カルチャー媒体などに取材記事を執筆。現在の仕事に就く前に、創作居酒屋、イタリアン料理店での業務経験あり。写真は大好きなアイスランドで撮影したもの。