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事業再生のプロが説く「飲食業界の生き残り戦略」。大切なのは利益を出し続ける工夫

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「難しいのは利益を上げ続ける仕組みを作ること」と松本氏

顧客満足度を高めるために、「接客」ではなく「接遇」をする

最近はボタン一つでモノが買えるようになり、食事もコンビニやデリバリーで手軽に済ませられるようになった。こうした状況で飲食店が生き抜いていくためには、飲食店ならではの「価値」を提供する必要があると松本氏は語る。

「花屋さんは安らぎを売ったり、電気屋さんは明るさを売ったりするのと同様に、飲食店では食事を楽しむ、記念日や特別な日を過ごすといった、『楽しい時間』を提供することが求められています」

そこで重要なのが、「接客」ではなく「接遇」だ。ただ食事を提供するだけでなく、お客様の名前を覚えて呼びかけたり、お客様に合わせたメニューを提案したりするなど、それぞれに合ったサービスを心掛けることが欠かせない。

また、あってはならないことだが、髪の毛が入ってしまうなどのトラブルがあった際にも、きちんと対処する必要がある。謝罪し、新しいものとすぐ取り替えるだけでなく、取り替えたところでお腹いっぱいで食べられないこともあるので、帰りに割引券やサービス券を渡すなどして、気持ちよく帰っていただく工夫を考える。飲食店の成功には、自店のファンを増やし、リピーターを獲得していくことが大切だ。常に客の満足度を意識し、サービスに反映していきたいところだ。

価格を決めてから利益を決める方法

提供する料理の価格の決め方にも、ポイントがある。原価と利益を足して決定するのではなく、あらかじめ価格を決め、それから利益、原価を決めるようにする方法が良いと松本氏は言う。

飲食店の食材原価は通常30~35%だが、単なる一品の原価を考えるのではなく、複数の料理を組み合わせて考えることが重要だ。例えば、人が満腹になるには大体500グラム程度の食事が必要だといわれているが、それを元に算出すると、飲み物2杯、食べ物2~3品ぐらいが適量だといえる。仮にこの量で3,000~4,000円くらいのお会計だと想定したとき、それぞれの価格をいくらに設定するかが問題だ。重要なのは顧客満足度は腹の満足度だけでなく、価格の印象からも感じるということ。お得感を演出できるよう、料理やサービスを工夫して客の満足度を上げていくことも大切だ。

Photo by iStock.com/MmeEmil

飲食業以外からも多くを学ぶべき

この講演において松本氏が強調して話したことの一つに、「飲食店以外の業種を見る」ということがある。他業種を見ることで、同業にはない経営テクニックを知ることができるという。

企業訪問をすることは難しいかもしれないが、新聞やテレビ、書籍などから情報を入手することは難しくない。また、異業種の人たちと付き合い、世の中の流れを感じながら、その中で自分が何を提供できるのかをしっかりと考えるべきだと、教えてくれた。

最後に松本氏はセミナー参加者に大きなエールを送ってくれた。

「自分の一生は一度きりです。だからこそ感覚的な思考や目の前の利益にとらわれてはいけません。せっかく飲食店経営を好きで選んだのであれば、しっかりと考え、計画的に経営していきましょう」

飲食店の経営は一筋縄ではいかない難しさがある。しかし、しっかりとゴールを設定して計画を練り、お客様のことを考えて経営努力をすれば、明るい道が見えるはず。松本氏の言葉を、ぜひ経営の参考にしてみてほしい。

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。