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若手料理人の登竜門「RED U-35 2018」、今年のグランプリは弱冠25歳の糸井章太さんに決定!

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グランプリ「RED EGG」を獲得した『メゾン・ド・タカ 芦屋』の糸井章太さん

11月4日、35歳以下の料理人を対象としたコンペティション「RED U-35 2018」の最終審査および表彰式が都内にて開催された。今年で6回目の開催となったRED U-35は、若手料理人の登竜門として大変な注目を集めているコンペティションだ。

初代グランプリには『レストラン ラ フィネス』のオーナーシェフ・杉本敬三さんが輝き、受賞後にはミシュランガイドで一ツ星を獲得するなど着実に一流料理人としての階段を駆け上がっている。また、2014年にはパリの一ツ星店『Restaurant Sola Paris』のシェフ・吉武広樹さん(現在、日本で開店準備中)が選出され、受賞後はドキュメンタリー番組「情熱大陸」に出演するなど、スターシェフとして日本中に認知されるようになった。

まさに料理人にとって最高のステージアップの舞台といえるRED U-35。今年は誰がグランプリを獲得したのか、最終審査と表彰式の模様をお届けしていく。

審査員は審査員長の脇屋友詞さんをはじめ錚々たるメンバー

最終審査は「専門学生への授業」

今年のRED U-35には、国内外より567名の料理人が参加。書類審査、映像審査、試食審査をくぐり抜けてきた6名の「GOLD EGG」受賞者が、最終審査の舞台に立った。審査員は、『Wakiya一笑美茶樓』オーナーシェフ・脇屋友詞さん、『ラ・ベットラ』オーナーシェフ・落合務さん、ソムリエの田崎真也さんなど、食の世界の超大物が揃った。

最終審査の方法は調理ではなく、なんと「授業」。料理人の「スター性」や「将来性」を見極めたいという理由から、このようなスタイルになったそうだ。調理師学校の専門学生21名を前に、持ち時間20分を使って「未来の料理人に伝えたいこと」と題した自由講義をそれぞれ行った。

『日本の宿のと楽 宵待』の川嶋 亨(石川県/34歳)さんは、いきなり「料理人にはなるな!」と予想外の発言。生徒の誰もが驚いたが、それにはこんな理由が……。川嶋さんが地元で参加している「イノシシメンチカツ」のプロジェクトは、害獣のイノシシを特産品に変えようというものなのだが、料理人だけではなく、じつに多くの専門家が集まって成立しているという。「ご縁があるから、あのプロジェクトに出合えた。RED U-35も人とのご縁があったから参加できたんです。だから皆さんも、ご縁をつなぐ人であって欲しい。“料理人になるな!”というのは、料理人だけにとどまるなという意味です」と熱く語った。

『レストラン ビオス』の本岡 将さん(静岡県/25歳)は、接客時の言葉の違いで料理の印象がどう変わるかをデモンストレーションで解説。一つ目は、「こちらが本日の前菜です」と出された料理。もう一つは、「こちらは、店の前の畑で今朝採れたばかりのズッキーニを使った前菜です」と出された料理。両方とも全く同じ料理だが、ほとんどの生徒が後者の料理が美味しそうに感じると答えたのだ。「人間の言葉には力があるんです。将来、もっとすごい機械が出てきて簡単に美味しいものが作れるようになる。だけど人の言葉ひとつで料理の印象はガラッと変わる。だから、料理人に必要なのは“想い”なんです」と力説した。

準グランプリを獲得した『Wakiya一笑美茶樓』立岩幸四郎さんの授業の様子

グランプリに輝いたのは弱冠26歳の糸井章太さん

そして、栄えある「RED EGG(グランプリ)」に選ばれたのは、『メゾン・ド・タカ 芦屋』の糸井章太さん(兵庫県/26歳)。糸井さんは、最終審査の授業スタートと同時に、お気に入りのBGMを流し、温かいマッシュルームのスープを生徒に振る舞いながら、料理人を目指したエピソードなどを自然体で語り始めた。

料理人としては、楽しいことばかりではなく、やはり苦しい時もある。しかし、「どんなことも楽しんでやる」と糸井さん。「楽しいことをする」のではなく、苦しいことも「楽しんでする」のが彼の信条だと言う。

また、最後の質疑応答では、このようなやり取りもあった。「どうしてスープを出そうと思ったんですか?」と質問する学生に対し、「最終審査は11月4日。多分ちょっと寒くなる頃だろうと思ったんです。その上、生徒さんは6人の授業を聞かなくてはいけないから、ちょっと疲れもあるんじゃないかと。だからスープを出せばきっとリラックスできるし、喜んでくれるだろうと思ったんです」と回答。ホスピタリティの大切さを語りながら、「料理人は人に喜びを与えられる。こんな幸せな職業はない」と続けた。スープを味わう学生たちの幸せそうな表情が印象的だった。

表彰式の様子

若き才能のこれからの活躍に期待!

RED U-35には、海外からも多くの料理人が参加しており、今回はアジア、ヨーロッパ、アメリカの各ブロックより1名ずつ「滝久雄賞」が贈られた。また、コンテスト最上位の女性参加者に贈られる「岸朝子賞」には、『コンラッド東京』の山本紗希さん(東京/35歳)が選ばれた。

ちなみにRED U-35では、総合プロデューサーで脚本家の小山薫堂さんが、毎年違った審査方法を考案し話題を集めている。今回も専門学生の中に女優が「刺客」として送り込まれ、審査員から指令を受けて鋭い質問を投げかけたり、「6名で東京オリンピックの料理を任されたら?」というテーマでいきなりグループディスカッションをさせられたりと、見ている観客の方もドキドキとさせられる。調理技術だけではなく、まさに人間力が試されるRED U-35は、これからも日本のレストラン業界を牽引する優秀な料理人を輩出していくだろう。今回受賞した若き料理家たちのこれからの活躍に期待したい。

■RED U-35 2018受賞者
・グランプリ(RED EGG)……糸井章太(兵庫県)/『メゾン・ド・タカ 芦屋』
・準グランプリ……立岩幸四郎(東京都)/『Wakiya一笑美茶樓』
・準グランプリ……本岡 将(静岡県)/『レストラン ビオス』
・岸朝子賞……山本紗希(東京都)/『コンラッド東京』
・滝久雄賞[アジアブロック]……本多淳一(中国・上海)/『SUN with AQUA Japanese Dining』
・滝久雄賞[ヨーロッパブロック]……小林珠季(フランス・ゴルド)『Restaurant Pèir PIERRE GAGNAIRE』
・滝久雄賞[アメリカ・オセアニアブロック]……浅沼 学(アメリカ・NY)『MIFUNE NY』

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大槻洋次郎

ライター: 大槻洋次郎

父親が喫茶店を営む家庭に生まれ、31才の時にカフェで独立開業。個人経営のこだわりカフェの先駆者的存在となった。現在は大手カフェスクールや展示会での講師活動、飲食店の開業支援などを行なっている。現場目線の初心者でもわかりやすいノウハウに定評がある。メディア出演も多数。得意料理はパスタ。