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低予算でゴーストレストランを開業。シェア型厨房『キッチンベース』利用者が語るリアル事情

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キッチンはもちろん、冷蔵庫もそれぞれの店ごとに分けて使用できる

出店側から見た『キッチンベース』

ここからは出店側にQ&A方式で話を聞いていく。『キッチンベース』に入居しているデリバリー専門店は6店舗。出店自体が初めてという方から、すでに実績のある飲食店まで出自はさまざまだ。取材をしたのはオープンして間もない時期だったため、まだ模索の段階だが、出店したオーナーたちは手応えを十分に感じている様子である。

●『マティーニバーガー』/シェフ・知花さん 

『マティーニバーガー』は、ニューヨークのアッパー・イーストサイドで育った生粋のニューヨーカー、エリオット・バーグマン氏によるハンバーガー店で、2010年10月、神楽坂に店舗をオープン。和やかで洗練された雰囲気の中、ニューヨーク流のハンバーガーの楽しみ方を提案している。

「ブルックリン」は同店の魅力を存分に味わうことのできるメニュー

━━デリバリーに興味をもったきっかけは?

オーナーが以前から、ニューヨークのUber Eatsに興味を持っていたので、日本にUber Eatsが参入すると、すぐに本店でデリバリーの活用を始めました。『キッチンベース』さんとは社長の繋がりでご縁があって一緒にやらせてもらうことになりました

━━人気の商品を教えて下さい。

ビーフ100%で180グラムのパテを手作りして、ボリュームたっぷりのバーガーに仕上げています。マッシュルームやゴーダチーズ、自家製ベアルネーズソースを加えた「ブルックリン」や、素材を全部乗せした「摩天楼 Skyscraper」が人気です。

━━『キッチンベース』のメリットは?

『キッチンベース』の方々やシェフの皆さんと情報を共有できたり、相談できたりすることです。切磋琢磨というよりも、一致団結といった雰囲気の中、全員でデリバリーに取り組めているのが、とても素晴らしいと思っています。

━━今後のビジョンは?

『キッチンベース』で『マティーニバーガー』のさまざまな展開をしていければと思っています。例えばスイーツなど新しいメニューを『キッチンベース』さんとともに考えていけたらうれしいですね。

●『ハンディクラフトワークス』/シェフ・佐々木さん

続いて話をうかがったのは、埼玉県八潮市に2017年4月22日にオープンした人気ラーメン店『ハンディクラフトワークス』。彩り豊かな野菜と肉が一緒に楽しめる「油そば」は女性からの人気も高い。

シェフの佐々木さんは東京で営業ができる可能性を話す

━━出店したきっかけは?

埼玉県八潮市にある店なのですが、最終的には東京にも出店したいという目標がありました。現在の形態はデリバリーですが、ここでのデータを分析すればどれくらい集客ができるのかなどが分かります。そうしたデータも生かしながら、新しい形でラーメンを伝えられたらと思って出店しました。

━━手ごたえは感じられていますか。

そうですね。初日は思ったようにうまくいかなかったんですが、野原さんたちに宣伝してもらったおかげで、どんどん結果が出てきています。

●『エスニックタイカレー タワンドンデリ&カレー』/シェフ兼オーナー・タワンドンさん

タイ産のハーブとスパイスを巧みに駆使した本格タイカレー専門店。タイ北部の都市、チェンマイ出身のフードクリエーター・タワンドンさんが生み出す革新的でありつつも正統派タイ料理が楽しめる。「もっと日本人に地元・チェンマイの料理を知ってもらいたい」という気持ちからスタートした。

日本でタイの食文化を発信する、シェフ兼オーナーのタワンドンさん

━━『キッチンベース』を知ったきっかけは?

インターネットです。ずっとタイ料理店で働いてきて店を構えたいと思っていました。オーディションから実際のオープンまで2か月もかかっていません。実店舗を自分で開こうとしたらもっと時間がかかってしまうでしょう。すごく良い企画だなと思って応募しました。

━━『キッチンベース』を使って開業してよかったことは?

たくさんありますが、デリバリーだからこそ、このエリアの人がどんな時間にどんなものを食べたいかを知ることができます。また、ジャンルの違うシェフと情報交換できることも良いと思っています。どちらも通常のレストランだとできませんから。

━━看板メニューは?

チェンマイの郷土料理である「カオソイ」と「ハンレーカレー」、「自家製のサイウア」の3つが看板メニューです。サイウアは屋台で人気のある辛口ポークソーセージなのですが、タイ料理が好きな人でも知らない人が少なくありません。タイ料理が好きな人は絶対ハマっちゃうと思います(笑)。

━━日本の飲食業界に思うことは?

日本にはたくさんの食材があり、色々な料理が提供されています。でも僕から見ると、自分が好きなものよりも、お客さんが好きなメニューを出しているレストランが多い印象があります。だけど、それだと面白いものが生まれない気がします。有名にならないと、やりたいことができないのかもしれませんね。タイは自分らしいメニューを出す人が多いんです。僕も、「僕が食べてもらいたいもの」を出して勝負したいと思っています

人と人が作り出すクリエイティブ

話を聞きながら印象的だったのが、運営側もシェフ側も生き生きとした表情であること。「働き方の見直し」は飲食業界のみならず社会全体の課題となっているが、『キッチンベース』が成長していくことで、料理人の新しい働き方が飲食業界に定着するかもしれない。

今後は同スペースを使って深夜から早朝までの予約デリバリー向けサービスを本格的にスタートする予定だ。さらに株式会社SENTOENの野原氏は「こういったスペースをもっと増やしていきたい。配達員のコミュニティも作りたいですね」と意気込む。彼らの輪がどのように広がっていくのか、楽しみである。

今後の展開も楽しみだ

『Kitchen BASE(キッチンベース)』
住所/東京都上目黒3-32-5 カーサデラソル2A
電話番号/03-6452-4214

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逆井マリ

ライター: 逆井マリ

フリーライター。音楽、アニメ、ゲーム、グルメ、カルチャー媒体などに取材記事を執筆。現在の仕事に就く前に、創作居酒屋、イタリアン料理店での業務経験あり。写真は大好きなアイスランドで撮影したもの。