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軽減税率スタートまであと2か月。大手外食各社の「価格」をめぐる戦略

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写真は『吉野家』恵比寿駅前店

イートインかテイクアウトかによって支払い額が異なる「本体同一価格」

一方、メニュー表に表記するのは税抜き価格(本体価格)のみで、税込み価格をイートインとテイクアウトで別にするという方針の飲食店も。つまり購入時には、表記された価格にそれぞれの税率を掛けた金額を清算する必要がある。

この場合、客にとってのメリットは、テイクアウトの相対的なお得感だ。テイクアウト利用客が多い店舗において、導入する利点は大きい。また、先述したいくつかの混乱を見越したうえで、あえてこの対応をとる前向きな理由としては、この機会に持ち帰りの売上を伸ばしたいというところが大半だろう。

現時点で、本体価格表示での経営を決めている各社の意思は、以下の通り。

■モスバーガー(モスフードサービス)
『マクドナルド』が、現時点で方針を発表しかねている中、同じ大手ハンバーガーチェーン店の『モスバーガー』では、「10月以降はテイクアウトの需要が増えるだろう」との見解から、本体価格の表示による各税率での販売を行う。

これに備えて、7月18日にはハンバーガー商品のバンズ(パン)をリニューアル。生地の保水力をアップすることで、テイクアウト時もパサつかず、ふっくらとした食感が長持ちするように改良した。

■吉野家(吉野家ホールディングス)
「経営環境から見て8%の(税込)価格にそろえるのは難しく、10%にそろえるとなると(客足の)冷え込みが予想される」ことから、本体価格を統一、店内飲食と持ち帰りそれぞれの税込み価格を提示する方針。

これまで、さまざまな局面で低価格路線を貫いてきた同社だけに、10月以降の価格設定については苦慮するところも大きかったと見られる。いずれの税率にもそろえ難い事情がある場合、残る対応は一択のみということだ。

こうして何社か外食チェーン店の例を見てみると、どのメリットを取るか、どんな価値観をどこに打ち出していくか、イートインとテイクアウトの現状比率はどの程度か、設備や体制は整っているかなど、さまざまな面から検討する必要性に改めて気づかされる。

個人店においても、店の使われ方や愛されてきた点をしっかり認識しつつ、効率性の高い新たな方針を定めていきたいものだ。

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田中恵実子

ライター: 田中恵実子

編集プロダクション在籍時にグルメやライフスタイル、住まいなどをテーマとしたさまざまな雑誌・Webマガジンにて取材&執筆をおこなう。現在はフリーランスとして、女性向けショッピングサイトなどの編集執筆を担当。世代より少し上の歌謡曲やJ-POPを愛聴。