本格パスタのファストフード化に挑む『PULS』。計算されたブランド力で多店舗化目指す

2019年11月01日更新（2019年10月31日公開）飲食店経営のノウハウ , 出店・開業 , 食材・メニュー

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ファーストフード経営戦略・戦術

ゆったりとくつろげるソファ席は、友人とのおしゃべりや仕事の打ち合わせにも最適だ

一貫したデザインでブランディングを図る

自由な食べ方をしてもらいたいという『PULS』だが、イートインでもデリバリーでも、テイクアウトでも一貫して行っていることがある。それが、同店オリジナルデザインのパッケージを活用することだ。

『PULS』のパスタが入っているパックは、外面にパスタの麺をイメージした黄色いラインが入っている印象的なデザイン。蓋を開けると驚きを表現したような罫線が目を引く。ドリンクカップも同色で統一され、全てにスタイリッシュなロゴが刻まれている。

パスタに見立てたデザインが可愛らしい

「内装やロゴ、パッケージ、オリジナルグッズなどのデザインは一貫して同じデザイナーさんにお願いしました。ブランド展開をしていけるよう、ここは力を入れています。オリジナルグッズは広告のつもりで作っていますね」

パッケージのみならず、内装や外観も明るい黄色で統一されており、目を引く仕様だ。オリジナルグッズはTシャツやランチバッグ、マグカップ、タンブラーなど多様。日本人はもちろんのこと、外国人のお客様からも人気があるのだという。

様々なオリジナルグッズは店内で手に取り、購入することができる

しっかりとブランドを作っている同店だが、これは今後の店舗展開も視野に入れたうえでのブランディングであるという田村さん。

「今後、どういった店の形態を展開していくかはわかりません。テイクアウトやデリバリー中心の店になるかもしれないし、それは場所や時代の流れや、さまざまなことを視野に入れながら考えていくと思います。ただ、この『PULS』というブランドを作っておくことで、店舗展開を考えるときに一貫したものが作れるのではないかと考えています」

デザイン性の高いパッケージやグッズはSNS社会の現在に注目されやすい存在といえるだろう。

課題は夜の集客。解決に向けてドリンクメニューを強化中

時代に合わせた経営手法とクオリティの高い商品を持ち合わせ、順風満帆に進んでいると感じる『PULS』。あえて課題を伺うと、「夜の集客」が真っ先に上がった。

「昼と同様、夜の時間帯もデリバリー注文が多いですが、来店してくれるお客様はまだまだ少ない印象です。オフィスワーカーやノマドワーカーの方々は昼の利用が多いですし、夜に恵比寿で食事をするとなると、選択肢は幅広いですからね」

軽減税率がスタートし、テイクアウトやデリバリーの需要が高まりつつあるが、その点においても『PULS』の経営スタイルは功を奏している。同店が行うイートイン、テイクアウト、デリバリーの三種のサービスの中でも、テイクアウト・デリバリーの比率は高い。しかし、パスタは手頃で手早い、家でも食べられるからこそ、外食激戦区の恵比寿では、来店するお客様を増やせていない状況だという。

「『PULS』はゆったりと過ごせる空間を意識していますし、お酒も提供しています。売上の面を考えても、夜に食事やお酒を楽しんでくれるお客様にもっと来ていただきたいところです」

夜の時間でも落ち着いて過ごせる店内

この状況を打破するために取り組んでいるのが、ドリンクメニューの改善だ。もともと『PULS』では、オリジナルブレンドのコーヒーや自家製のレモネードなどこだわりのソフトドリンク、ワインやビールなどのアルコールも提供していたが、2019年の夏頃からさらに種類を増やし、特にアルコールに力を入れるようになったそうだ。

「アルコールは当初ワインとビールのみを置いていました。ただ、当店は最初にも言った通り、幅広い層のお客様が来てくださいます。そこで、もっと若い方も楽しんでもらえるような、飲みやすいカクテル系のドリンクを増やしてみようということになりました」

とはいえ、ファストフード業態だからこそ、ドリンクに掛ける手間にも限りがある。そこで、もともとこだわっているソフトドリンクを活用しながら、カクテルの幅を広げた。人気の高いヨーグルトドリンクにリキュールを組み合わせたものや、自家製レモネードのシロップを使ったハイボールなど、こだわりつつ工夫を凝らしたドリンクたちは、若者や女性からも人気を集めているという。

こうして試行錯誤を重ね、より高みを目指している『PULS』。最後に今後の展開を伺った。

「やはり店舗展開は考えています。例えば、ここをセントラルキッチンにして、新店舗はちょっとしたカウンターとテイクアウト・デリバリーを中心にした店もいいですね。ここがあればほかの店舗はそんなに面積もいらないですし、今のこの場所をもっと有効に活用できるのではとも思います。まだまだ改善途中ですが、いろいろと試しながら『PULS』のブランドを作っていきたいですね」

この恵比寿の一号店を皮切りに、『PULS』はまだまだ進化を重ねていくだろう。今後の動きにも、ぜひ注目しておきたいところだ。