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2020年飲食トレンドは「おもて無グルメ」。ホットペッパーグルメ外食総研が発表

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リクルート主催「2020年のトレンド予測」、飲食領域の発表の様子

1月20日、リクルートより「2020年のトレンド予測」が発表された。その中から飲食領域のトレンドを紹介する。毎年、キャッチーな言葉でグルメトレンドが発表されるが、今年発表されたのは「おもて無グルメ」。「おもてなし」をあえて「おもて“無”」と表現したその意図は!?

「おもて無グルメ」とは?

今回の発表会では、飲食や雇用、住まい、自動車、進学などさまざまな分野におけるトレンドが発表された。飲食領域のトレンドは「ホットペッパーグルメ外食総研」上席研究員の稲垣昌宏氏より解説があり、2020年のキーワードとして「おもて無グルメ」が発表された。

「消費者は生活環境の変化に伴い“食”の多様性を求めていますが、外食では料理のクオリティを妥協したくないと考える人が多いようです。また、外食業界では軽減税率、キャッシュレス推進、人件費高騰などの環境変化やITなど各種テクノロジーの導入をきっかけとして、『料理』と『サービス』の価値や対価を見直したり、両者を分けて考えたりする動きが広がってきています。この両者の考えから、サービスを簡略化し、その分、美味しさを追求する『おもて無グルメ』が注目されると考えています」

2019年は消費増税が実施され、消費税が外食は10%、中食は8%と2ポイントの差がつくことになった。外食は高い分、「より高い満足度が求められるようになった」と稲垣氏は言う。

「外食のコストパフォーマンスを数式に分解すると、分母はお金、分子が料理・サービスになると思います。調査によると分母のお金については、増税以降、“外食の費用をより気にするようになった”という人が2割以上いました。また、料理とサービスについて『調理技術』『食事』『設備・空間』『接客』の4項目に分けて優先順位を聞くと、相対的にサービスより料理の方が優先順位が高いと考える人が多いことがわかっています」

通常、サービスと料理のレベルは比例関係にあることが多く、料理のクオリティが高ければサービスのクオリティも高いと考えられてきた。しかし増税後、消費者のお財布事情が厳しくなる中で、サービスよりも料理の質に重きを置く消費者が多いという背景があるならば、ハイクオリティの料理を提供する一方で、サービスを簡略化し、その分手頃な価格に設定している店舗が期待されるのは必然とも言える。

「ホットペッパーグルメ外食総研」の調査によれば、スマホで注文OKな「セルフ焼肉店」や、食券制でSuica決済も可能な「だし茶漬け専門店」など、サービスを簡略化しつつ、手頃な価格で美味しい料理を提供する店への期待が高まっているという。

飲食店は改めて、自店の料理やサービスのコストパフォーマンスについて考える必要がありそうだ

飲食店は「味」と「サービス」のバランスを再考する時代へ

さらに消費者だけでなく、飲食店側の事情も変化がみられる。キャッシュレス決済などのテクノロジーの導入により、オペレーションが大きく変化しつつある昨今は、サービスの在り方を見直す店舗が増えてきているようだ。

「ひと言にサービスと言ってもいろいろな要素があります。提供しているサービスのうちのいずれかを省略化したりやめたり、有料化したり無料で残したりと、一つ一つのサービスを見直すタイミングが来ています。『スマイルゼロ円』なんて言葉もありましたが、そこにも人件費という原価がかかっていることを意識せざるをえない時代になってきたということです」

最後に稲垣氏は、サービスの在り方を見直し、「おもて無グルメ」を実践している実例をいくつか紹介してくれた。たとえば東京・二子玉川に店を構える『ルナティック』は、サービスを重視することが多いフランス料理を提供しながら、食券を導入し、配膳と食器を下げる作業をお客に任せるセルフサービスを実施。サービスを簡略化することにより人件費を削減し、その分、価格を抑え、ファミレス並みの低価格を実現しているという。一番人気の「牛フィレステーキフォアグラのせ」はなんと1,500円(税別)。フレンチでは考えられない価格だ。

『ルナティック』の券売機。写真は「Foodist Media」の取材記事より

稲垣氏はこうした実例を踏まえながら、「サービスは簡略化してもOKという“おかまいな食ぅ”みたいなタイプの消費者が増えて、サービスよりも料理のクオリティを求める“おもて無グルメ”が流行ると予想しています」と締めくくった。

2019年は増税や軽減税率の導入、人件費の高騰、キャッシュレス推進など、飲食業界にとって大きな変化のある一年だった。2020年はこの影響もあり、お客も飲食店も外食の在り方を改めて考える時期に来ているのかもしれない。“おもて無グルメ”の動向に、今後も注目したい。

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。