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【新型コロナ】「外食産業の声」発足、家賃減免を求める「支払いモラトリアム法」提言

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『鮨西むら』オーナーの西村文輝氏

全国の飲食店経営者からリアルな声。業界の窮状を訴える

松田氏の提言を踏まえ、稲本氏は「今回の案を含め、スピードをもって何らかの施策を重ねていかなくてはいけない。この現状をより皆さんにリアルにお伝えしたい」とコメントし、会場にいる『鮨西むら』の西村文輝氏、串カツ田中ホールディングスの貫 啓二氏、そしてZoomで参加している経営者達の声を聞いた。

■早々に対策を練らなければ「このままでは5月には廃業」
たくさんの経営者の声の中で、最も多かったのが「このままでは廃業してしまう」という悲痛な声。緊急事態宣言が出てから店を休業にしているという『鮨西むら』の西村氏は、「正直言って5月まで持つかどうか。早急にこの『家賃支払いモラトリアム法』を何とかしていただければと思って参加しました」とコメント。

さらに串カツ田中ホールディングスの貫氏も、自社のフランチャイズ店舗や取引先について言及。

「フランチャイズは中小企業が多いこともあって、家賃が本当に来月払えるかなというところまで追い込まれています。それに、外食産業は仕入れの業者さんや生産者さんとも繋がっている。この連鎖倒産は止まらないんじゃないかと恐怖を感じているところです」

都内の商業施設を中心に多数の飲食店を出店している株式会社トランジットジェネラルオフィス代表取締役社長の中村貞裕氏もまた、「非常に先の見えない不安に飲まれているのが現状です。闇の中にいる感じで、僕らの大切な従業員の安全と雇用の確保のために何とか歯を食いしばって頑張っている状態」と訴えた。

串カツ田中ホールディングスの貫氏は、食材の卸業者や生産者などの経営状態についても危機感を感じていた

■全国緊急事態宣言を受け、地方への被害も甚大に
全国に緊急事態宣言が広がっている現在では、地方でも大きな影響が出ている。各自治体の支援や被害の状況について、全国の経営者よりさまざまな意見が寄せられた。2月にいち早く緊急事態宣言が発令された北海道の惨状を訴えたのは、株式会社ラフダイニング代表取締役の大坪友樹氏。

「中心地であるすすきのは壊滅状態。不安でいっぱいです。北海道は特に外国人観光客を誘致し、彼らに頼ってきたエリアでもあります。終息したとしても、短期間で外国人観光客が帰ってきて、街の明かりが戻ってくる可能性は非常に少ない。でも、潰れてからでは遅い。各店がすべきことももちろんたくさんありますが、家賃モラトリアム法には賛成です。私たちは北海道で飲食業として生きていく。また以前のように、居酒屋を通して皆様に最高のおもてなしができるようになることを切に望んでいます」

同じく観光地として栄える沖縄について、同県で飲食店を複数経営する株式会社みたのクリエイト代表取締役社長CEO・田野治樹氏が言及。

「うちは5月8日がデッドライン。これを越えると本当に倒産しかねない。今のままでは雇用が守れないので、雇用を守るためにも家賃を補償してもらいたいです。うちが生き残るかどうかの前に、雇用を守らないと、観光客が戻ってきたときにも飲食店がない状態になってしまいます」

福岡を中心に『焼とりの八兵衛』などを展開する株式会社hachibei crew代表取締役・八島且典氏は「福岡市は市長が休業・時短要請に応じた店舗の賃料を8割負担すると発表していて、かなり楽にはなっている」としつつも、現状に対しての不安を漏らした。

「やっぱり精神的な圧迫はありますよね。それに相手は見えない敵である新型コロナなので、街は何が何だかわからず混乱している状況が続いています。一日も早く新型コロナの被害が終わってくれないと、この混乱や苦しみは続いていくのかなと思います」

「Zoom」を活用して参加した株式会社hachibei crewの八島且典氏

■より声を届けるべく、行動を起こす企業も
現状を訴える声だけでなく、積極的に行動を起こしている企業からもコメントがあった。カフェ・カンパニー株式会社代表取締役社長・楠本修二郎氏もまた、売上が立たない状況のため、西村康稔経済再生担当大臣と話すなどして、家賃と返済の減免を政府に訴えているという。

「松田さんが提案しているモラトリアム法に対しても全面的に賛成したいです。ぜひ今回を機に、政府に飲食業界の声を直接伝えられるようなネットワークになることを強く期待しています。早急に資金提供が円滑にできる仕組みを作らないといけないと思うので、皆で声を上げて引き続きやっていきたいところです」

さらに株式会社ワンダーテーブル代表取締役社長の秋元巳智雄氏も、総理官邸や都民ファーストの会に掛け合っていると話す。

「まず3月20日に総理官邸に行って、現状のしんどいところを含めていろんな話をしました。政府は雇用調整助成金の拡大などをやってくれていますが、今までの皆さんのお話の通り、やはり即効性のあるものではなく、直近の賃料や社員の給料を補償できるわけではないんですよね。しかも今、自主的に休業している人も多いので何とかしなければということで、4月8日には有志の経営者40社と一緒に小池都知事、そして都民ファーストの会の皆さんに会いに行って、いろんな支払いを一度差し止めにできないか、賃料の支援をしてくれないかという話をしました」

「Zoom」を活用して参加したカフェ・カンパニー株式会社の楠本修二郎氏

この闇が晴れるまで闘う。そのための発信を続ける

たくさんの飲食店経営者の声が直接届けられた今回の記者会見。これらを踏まえて、最後に稲本氏は「この闇がずっと続くとは思っていない」と語る。

「この闇が晴れて、少しでも晴れ間が見えたときにどう立ち上がるかを、このYoutubeチャンネルを使ってどんどん発信していきたい。現時点で倒産件数は実際公表されているものよりも相当多いものになっていると思います。倒産した会社やなくなった店は二度と戻りません。だからこそ、働く人が多いこの飲食業界を、何とかして守りたい」

同委員会では今回の家賃支払いモラトリアム法をはじめ、さまざまな提言を行っていくつもりだという。さらに公式のYouTubeチャンネルでは、提言のほかにも定期的に飲食店経営者に役立つ情報も配信される予定だ。新型コロナ、そして飲食業界衰退の危機に立ち向かう彼らの声に、今後も耳を傾けていきたい。

■「外食産業の声」委員会のYoutubeチャンネルはこちら
※4月28日18:30から「政党代表者と外食産業経営者のディスカッション」と題したライブ配信が行われる予定

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。