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飲食店と「コロナ」の戦いは終わらない。日本フードサービス協会に聞く外食業界の実情

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画像素材:PIXTA

緊急事態宣言が解除され新型コロナウイルス禍が徐々に収束に向かい、社会は明るさを取り戻しつつあるように思える。しかし、外食産業の業界団体である一般社団法人日本フードサービス協会(以下JF、所在地:東京都港区、会長:赤塚保正)は、厳しい見通しを強調する。同協会の石井滋常務理事にここまでのコロナ対策とアフターコロナについて聞いた。

雇用調整助成金は合格点も債務保証制度は予算10分の1

新型コロナウイルス禍は、経営基盤が脆弱と言われる外食産業を直撃した。JFでは大量の倒産企業が出る可能性があると考え、早くから政府与党に様々な支援を要請。果たして、それらはうまくいったのか。

3月上旬の時点でJFは休業補償(雇用調整助成金)の要請を行っていた。感染拡大防止のために休業はやむを得ないとしても、従業員の生活を守り、雇用を確保するためには行政の支援が必要である。この点について石井常務理事は「これは1日1人8330円という上限がありましたが、第2次補正予算(6月12日成立)で、1万5000円まで手当てされることが決定しました。この点は良かったと思います」と言う(以下、コメントは全て同常務理事)。

もっとも、思い通りにいかなかった部分もある。その1つが債務保証制度である。JFでは6月中に事業者が金融機関から融資を受ける際に債務保証をする制度を開始する。これは一定の条件を満たした事業者が弁済できなくなった場合、国とJFが立ち上げた基金から、上限1億円のうち8000万円までを代位弁済するもの。担保がない事業者などが、金融機関から借り入れられるようにする制度である。

「国に『100億円ほど出してほしい』と要望していたのですが、国が10億円あまり、協会が1億円あまり、総額で12億円の基金となってしまいました。債務保証としては70社程度までは可能ですが、それ以上になると資金が底をついてしまいます。この点は引き続き、政府に対して基金の増額を求めていきます」

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危機の際はキャッシュの有無が生死を分ける。その意味でJFとしては加盟400社をカバーできるだけの資金を用意したい意向で、政府の支援策は不十分であると感じている。

基金から代位弁済した場合、国やJFが事業者に対して債権を有することになるが、多くの事業者が担保がないために、債権の回収は難しくなることが予想される。政府からすれば、回収が難しい債権(不良債権と呼んでいいだろう)が増えることが分かっているのにこれ以上の金を投入することが、税負担する国民に理解してもらえるのかという危惧があるのかもしれない。しかし、事態は深刻である。

「リスクを冒してでも取り組まざるを得ない状況になっています。何もやらなかったら、銀行の融資を受けられない企業が多数出てくるでしょう。中小や個人の事業者には日本政策金融公庫の融資やセーフティーネット保証が使えます。しかし、その規模を超える中堅外食企業、具体的には資本金が5000万円を超え、かつ従業員が50人以上の企業はセーフティーネット保証の対象でなく、政策金融公庫の貸付も難しいゾーンです」

石井常務理事は、苦しい実情を口にする。誤解を恐れずに言えば、中小や個人は比較的手厚い支援が受けられるが、その対象から漏れるJFに加入している多くの中堅以上の企業が、より、先行きの見えない状況に置かれているのである。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/