飲食店と「コロナ」の戦いは終わらない。日本フードサービス協会に聞く外食業界の実情

画像素材:PIXTA
大企業にのしかかる家賃負担
中堅から大手の場合、特に負担になるのが家賃である。売上が減少すれば仕入れを減らし、従業員は雇用調整助成金で何とかカバーできる。しかし、家賃は売上の増減に関わらず常に一定の負担がかかってくる。特に多数の店舗展開をする企業には毎月の家賃が重くのしかかる。
第2次補正予算が成立し、複数店舗を展開する個人・中小・中堅外食事業者に関しては条件によって月額上限100万円、半年間で最大で600万円まで補助が出されることとなった。しかし、大企業は対象となっていない。
「会員からは『家賃をなんとかしてくれ』という声が一番多いです。売上10億円程度の中堅外食事業でも600万円は焼け石に水です。家主が大手のデベロッパーであれば、『苦しい時はお互い様だ』と30%、50%割り引いていただいたという話も聞きますが、家主が個人の方の場合、家賃収入で生活をしている場合もあり、そうなると割引交渉も事情が変わってきます。外食産業は年間の売上が25兆円程度ですから、家賃は2兆5000億円程度になります。食材や人件費はコントロールできても、家賃はできません。そこを政府には考えていただきたいと思います」
「第2波がきたらアウトかもしれない」
緊急事態宣言が全面的に解除され(5月25日)、東京都では東京アラートも解除(6月11日)、翌12日には「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」におけるステップ3に移行となった。感染そのものが収束に向かっているのは確かではあるが、外食事業は現在進行形で大きな被害を受けており、回復までの道程も見えてこない。JFも様々な点で政府与党への要請は続けている。
「協会としては、収束に至っていないという認識です。確かに、徐々に活性化しているように見えますが、お店の方で1つずつテーブルを空けるなど、各店舗で工夫しながら間引き営業をやっているのが実情です。来店客数が増えても満員にはなりません」と言う。その上で、仮に感染の第2波がやってくるようなことがあれば、耐えきることは厳しい。
「万が一、第2波が来たら飲食業、外食産業はどうなるか分かりません。上場しているような大企業でも資金ショートを起こす可能性があります。どの会社の財務体質も急激に悪化してきています。国の資本を注入してほしい、劣後ローンの導入などを強く要請している企業が出ています」と警告を鳴らす。

画像素材:PIXTA
会員の一番の声は「今の状況を何とかしてくれ」
石井常務理事は飲食業が正常化するのに1年近くかかると予想している。その前に第2波がやってくる最悪のシナリオも考えなければならない。
最後に「新型コロナウイルスの教訓は?」と聞くと、こんな答えが返ってきた。
「まだ収束が見えない中、教訓をお話しするのは早いのかと思います。まずは『今の状況を何とかしてくれ』というのが、会員の一番大きな声です」
緊急事態宣言が解除されても、ウイルスがなくなるわけではない。コロナとの戦いはこれからも続き、これからが本番なのかもしれない。
【一般社団法人日本フードサービス協会】
日本の外食産業の発展と、豊かな食文化の創造に貢献するべく、農林水産省(当時は農林省)の認可を受け、1974年(昭和49)に設立。加盟社は正会員、賛助会員を合わせて約800社で、外食産業関連で最大規模の組織。所在地は東京都港区、会長は赤塚保正氏。
