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『カオカオカオ』新井氏の3つの戦略。コロナ禍でも攻めの出店、その理由とは!?

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ノートを元に『999』の3つの戦略について解説してくれた

3つ目の戦略「内外化」とは

3つ目の戦略である「内外化」とは、内部で抱えていた問題を外部と連携することで解決することを指す。

「『999』はパートナーシップを結ぶことで自分たちの生産性を落とさないようにしています。例えば資金調達は財務コンサルタントに依頼。自力で融資を受けようと思ったら時間がかかる上に5000万円くらいしか借りられないところを、財務コンサルタントに任せれば1億円の融資を受けることができます。また、人事採用もコンサルタントに委託しています。アルバイト募集には通常時で200~300人、コロナ禍においては300~400人の応募があります。僕らが従業員のペルソナを設定しておけば、希望にそった人材だけが入ってくるのです。販促PRもチームを作って任せています。その分、僕は浮いた時間を使って、専任化などの戦略を練ることができます。内外化というのはそういうものです」

新井さんは、「資金繰りに関する内外化」も大事だと語る。

「今多くの人が政策金融公庫や東京信用保証協会から融資を受けていると思います。しかし、決算が赤字になると銀行は貸してくれなくなります。飲食店が資金調達できなくなる時期があると考えているのです。ですから今のうちから、新しい資金調達の仕組みを考えなければいけません。その一つがプロジェクトファイナンスです。ITやベンチャー企業では一般的な手法ですが、飲食店業界には馴染みがありません。これを外食産業に落とし込めるようなスキームを作れば、新しい資金調達の手段になります。例えば、新規プロジェクトに対して僕が1000万円出し、別の人が2000万円出資したとします。毎月利益が100万円ずつ入ってきたら、1:2で分け合うというような仕組みです。その場合、出資者が得られる利益の上限を決めておけば、銀行への返済が始まる前に会社の儲けにできます」

『999』は“タイ屋台料理”という強い個性が武器

出店でピンチをチャンスに変える

3つの戦略を駆使し、新規出店の構想を練っている新井氏だが、先が見えない時期に出店するのはかなり勇気がいることではないだろうか?

「皆さんからの話を聞いていて、ちょっと違うなと思うのは、この厳しい状況をじっと耐えていることです。今回借りたお金は、2~3年後に返済しなければなりません。僕はその時に第二次倒産が起きると思っています。今攻めることを考えないと、未来の自分を守ることはできません。エリアの兼任化や、外食・中食・内食の兼任化を進めていくことも大切ですが、一番利益を生むのは出店だと思っています。なぜかと言うとテイクアウトやデリバリーは会社が良くなるほど利益が出るような構造ではないからです。しかも多くの飲食店がこぞって参入しているので競争が激化しています。やっても悪くはありませんが、専任化とエリアの兼任化を考慮した出店が一番だと思います」

新井氏によると、この時期にリスクをとって出店するメリットも大きいという。大手チェーンや老舗の有名店であっても撤退している今、立地の良い物件や、有能なシェフを獲得するチャンスが高まっているのだ。しかし、従来のようなマーケットインの発想で参入するのはおすすめできないと話す。

「マーケットインは需要と供給のバランスがイコールになっているときに成立するものです。今その考え方だと失敗すると思います。SDGsに則った新しい考え方をすれば、自然とマーケットインではなく、プロダクトアウトになるはずです。お客様の思想が変わった今、外食産業の戦略も変えていかなければなりません」

問題の本質がコロナではなくSDGsであるならば、コロナ以前の世界に完全に戻ることはないだろう。先行きは不透明だが、新井氏が語るようにSDGsの流れに乗ることを意識してプロダクトアウトしていけば、その先に光が見えてくるかもしれない。

『タイ屋台 999 中野店』
住所/東京都中野区中野5-53-10
電話番号/050-5570-6023
営業時間/平日11:30~14:00/17:30~24:00、土・日・祝11:30~15:00/17:00~24:00
定休日/無休
席数/43
http://www.thailand999.com/

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。