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「FOODIT TOKYO 2020」開催。「飲食DX」でウィズコロナ時代を生き抜く

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株式会社トレタ代表取締役の中村仁氏(中央)、株式会社カゲン代表取締役の子安大輔氏(左)、株式会社インフォマート取締役の大島大五郎氏(右)

10月19日、トレタ主催の「FOODIT TOKYO 2020」が開催された。飲食業界の最新動向や飲食店のテクノロジー活用について議論する場として毎年開催されている同イベント。今回は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、初のオンラインでの実施となった。

今年、飲食業界は新型コロナウイルスの影響により大きな痛手を被った。しかも、新しい生活様式の定着により感染防止対策に配慮した営業スタイルが求められるように……。今後、飲食店はどのように経営の舵を切っていけばいいのだろう。本イベントで行われた数々のトークセッションから、ヒントを得ていこう。

【注目記事】堀江貴文氏「飲食店の究極の形はスナック」。外食産業発展のヒントを「FOODIT TOKYO」で語る

飲食店は今、変わらなければならない

オープニングセッションとして、主催である株式会社トレタ代表取締役の中村仁氏、株式会社カゲン代表取締役の子安大輔氏、株式会社インフォマート取締役の大島大五郎氏より、飲食業界の現状について言及があった。

現在、飲食店はコロナ禍を何とか耐え抜き、少しずつもとの売上に戻りつつある。しかし、このまま経営を続けても「コロナ前と同じような売上状況に戻ることができるのか?」と不安を抱えている店舗も少なくない。中村氏によれば、今、多くの飲食店は生き残れるかどうかの境目にあるという。

そこで飲食店の経営を見つめ直す手段として、今回「FOODIT TOKYO 2020」のテーマに挙げられたのが“DX(デジタルトランスフォーメーション)”。DXとは、これまでアナログベースだった事業をデジタルベースの経営へと移行していくことを指す。近年はモバイルオーダーやキャッシュレス決済など、飲食店でもテクノロジーの導入が活発になってきている。しかし、導入するだけでなく、そもそもの経営スタイルをデジタルベースに変えていく必要があるというのだ。中村氏は語る。

「今までは店舗がベースにあって、そこにどうやってITを導入していくかという考え方でしたが、DXはまったく逆の理論。デジタルをベースに事業をつくり直して、その上で店舗で何をすべきかを一から考えていくやり方です。飲食店は根本から変わらないといけません。覚悟が必要だったり、大変な思いをしたりする可能性はありますが、ここをやりきらないと未来はやって来ないんです」

飲食店は今こそ、大きく変わらなければならない。とはいえ、具体的に何をすればいいのかわからない店舗も多いだろう。そこで、このあと続く各セッションでは、飲食企業の経営者やフードテックに詳しい専門家によるDXの考え方や実践方法が議論された。

単にITを導入するだけでは、DXとはいえない

フードテック=効率化だけじゃない

企業のDX促進をサポートする株式会社シグマクシスのディレクター・田中宏隆氏は、国内外のフードテックのトレンドついて解説。機械の導入により調理や店舗運営を効率化する店舗が登場しているが、これらは効率化以外にも、飲食店経営の可能性を広げる手段にもなっているという。

「フードテックは、“機械で調理が自動化されて楽になる”ということではないんです。例えば、フライパンなどの調理器具に温度管理のセンサーがつくことで、一流シェフがおこなっているような火入れの技を再現できるようになるかもしれない。そうすると、クオリティーの高い商品をより広く提供できるようになりますよね。単なる効率化でなく、今までの飲食店経営を変えるきっかけになると考えています」

田中氏によると、アメリカではサラダを1,000種類ほど作れるスマートベンディングマシンが開発されている。サラダを注文通りにカスタマイズして作れるため客の満足度が高まるほか、トッピングなどの追加商品を購入する機会が増え、クロスセルにつながっているそうだ。

ほかにも、アメリカ・サンフランシスコにあるハンバーガー店『クリエイター』では、ハンバーガーをつくるロボットを導入。効率化はもちろんのこと、ロボットで作るハンバーガーが話題を呼び、集客にもつながっているという。田中氏はこうした流れについて、以下のように見解を示した。

「機械は人の仕事を奪うのではなく、人が本来果たすべき役割をサポートしてくれる存在なのかなと思います。肉体労働や単純作業の一部を機械が代替して、その分、人がもっとエモーショナルなところに注力できるようシフトすると、外食の体験がより楽しくなるのではないでしょうか」

株式会社シグマクシス ディレクター・田中宏隆氏

飲食店にテクノロジーは必須。DX実現で顧客管理を徹底

『CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダ・ワークス)』を経営する株式会社CRISP代表取締役社長・宮野浩史氏のトークセッションでは、実際にテクノロジーを積極活用している国内飲食店の事例を知ることができた。

株式会社CRISPでは自社でエンジニアを抱え、モバイルオーダーアプリを開発するなどまさにDXを実現した経営を行っている。実際、株式会社CRISPはデジタルベースでの店舗運営がかなり進んでおり、『CRISP SALAD WORKS』における客のキャッシュレス利用比率は85%。さらに経営している店舗の半分ほどは完全キャッシュレス店舗であるという。また、自社のモバイルオーダーを活用したデジタル注文比率は67%にも上る。こうした経営手法を取り入れている大きな理由として「お客様のことを知るために始めた」と宮野氏。

「以前から、たくさんお客様が来てくださるのに、なかなか覚えられないのがもったいないと思っていたんです。今はモバイルオーダーの利用状況から、お客様のお名前や来店回数もわかります。現金でやりとりするときにお客様の名前を聞いたりするのは変だけど、デジタルであれば自然に情報管理できますから」

お客様の情報を正確に把握し、より良いサービスを提供するためにDXを実現している同社。これに対して、宮野氏は「飲食店にとって、もはやテクノロジーの導入は当たり前」と語る。飲食店にテクノロジーは関係ない、という時代は終わりつつあるのかもしれない。

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。