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緊急事態宣言下で戦う飲食店のリアルな声。「時短協力金」未だ支給されず

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コロナ禍以前は夜の歓送迎会利用も多かった『hygge』

協力金は十分だが未だ支給されず逼迫した状況

緊急事態宣言下で時短要請に応じた事業者に対し、1都3県では1日当たり6万円の協力金が支給される。これについて小濱さんは「支給はありがたいけれど、うちの場合に限っては通常営業時に想定される売上よりは少ない」と話す。さらに協力金はいまだ支給に至っておらず、毎月50万円程度の赤字を抱えているという。

緊急事態宣言解除後、1都3県では21時までの時短要請に緩和されたが、事業者への協力金も1日当たり4万円に縮小された。これについては「協力金をいただけるのは大変ありがたい。夜間出歩く人は減ってきているし、今後しばらくは食事メインの飲食店が夜遅くまで営業していても売上は変わらないように思うので、時短要請に従う予定です」と引き続き時短要請に従う構えを示す。

宣言解除後、売上を戻していくための方針について聞くと「ランチのオムライスが評判になってきているのでそれをメインにして、夜も食事中心のメニュー構成に変えていく予定です。けれど私自身さまざまなジャンルの料理を学んできて、お客さんに喜ばれてきたので、オムライス専門店にはしたくないですね」と客のニーズに合わせた営業スタイルに変更する予定だという。

今回の緊急事態宣言解除に際し、新たに検討されているのが改正特別措置法で新設された「まん延防止等重点措置」の施行だ。これが施行されると各都道府県知事は感染リスクが高い飲食店などに営業時間の短縮命令が可能となり、従わない場合は事業者へ20万円以下の過料を科すことができる。

これについて小濱さんは、「感染症で亡くなる人を減らすためには時短要請に従わない飲食店に対し、ある程度罰則は必要だと思う。ただ、過料よりは営業停止の方が、実行力があるのではないか」と罰則の是非については賛同を示す。その上で、「飲食店の経営存続は宴会で決まります。だからこそ、安心して宴会ができるよう、国や自治体には食事が終わったあと、会話を楽しむときはマスク着用というルールを周知して欲しい」とアナウンスの徹底を要望した。

アラカルトメニューにおでんテイクアウトもスタートした東京都三鷹市『ひねもす』

緊急事態宣言下の時短要請で、特に売上への影響が大きいのが酒場だろう。「時短要請に応じ平日は16時~20時、土日祝日は15時~20時で営業していますが、その結果売上は去年の半分ほどです」と東京都三鷹市で燗酒店『ひねもす』を営む雨宮明日香氏は語る。平日の早い時間は来店がほとんどない一方、平日18時半過ぎや土曜日には来店が多く、「席がなく、お断りしなければならない状況もしばしばです」と利用客の一極集中が見られるという。

『ひねもす』ではオーダーを受けてすぐ提供でき、テイクアウトにも対応できるおでんを新たに取り入れた

『ひねもす』では時短営業に伴い、短時間での提供が厳しいコースメニューを停止し、アラカルトメニューの提供に一本化。ラストオーダーぎりぎりの来店でも対応できるようおでんメニューもこの冬新たに取り入れた。おでんメニューはテイクアウトもできるようにし、19時のラストオーダーが終わってからも購入できるよう工夫したという。しかし、「テイクアウトをご利用するお客様は4月の頃に比べて圧倒的に少なかった」といい、『hygge』小濱さんの話と共通している。

また、日曜日に12時オープンする昼酒営業も3回ほどトライしたというが、周知が足りなかったからかあまり効果は出なかったという。「今回、テイクアウトや時間を早めた営業などさまざまな対応を考えましたが、新しいことを始めて定着させるには、それを認知してもらう時間が必要だとわかりました」と雨宮氏。付け焼刃的な対策ではなく、この先何年も続けていける取り組みが大切になっていきそうだ。

時短協力金については「1日6万円(ないし4万円)というのは、うちのように夫婦ふたりで経営している小さなお店にとっては十分です」と金額面では納得感を示す。一方、申請している1月7日~2月8日分の協力金は3月20日時点でまだ振り込まれておらず「いくら金額が十分でも手元にお金がなくては……。かなり逼迫した状況なので、早急に振り込みをお願いしたいです」と早急な支給を切望している。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

フレックスの積極的導入や休日の分散化など、一極集中を避ける施策をお願いしたい

雨宮氏に客足を取り戻すために予定している取り組みについて伺うと「まずは現在の営業時間・形態などについて常連客やリピーターの方へ的確に伝えられるよう、ホームページやSNSでのお知らせを徹底したいです。この1年、営業時間をコロコロと変えざるを得なかったので、お客様にはかなりご不便を強いたと思いますので」と、常連客への営業時間の周知徹底を最優先にするという。加えて「これから暑くなっていくので燗酒専門店であるうちのお店は通常であっても閑散期。そのため目の前の売上に一喜一憂せずに、商品開発やメニュー形態の見直しなど、地道に店の地盤を固めていきたいなと思っております」と、焦らず長期的な視点で店舗運営を行う方針を示している。

宣言解除日となった22日時点で、東京都をはじめとした大都市圏では感染者が微増の傾向にあり、第4波も懸念されている。今後の感染拡大に備え雨宮氏は「しばらくは席数を減らして営業予定。これに伴い、店舗の回転数を上げ一軒目、二軒目としての利用を上手く取り込んでいく施策も必要かなと考えています」と感染対策と、売上確保の両立を目指していく構えだ。

最後に、今後もコロナ禍で飲食店が持続的に営業を行うために進めてほしい対策や補償があるかと尋ねると「困っていれば利用できる補助金や借入制度などが多いのはありがたいですが、もう少しわかりやすくしてもらえればとは思います。そして金銭面でのサポートよりも、人々の動きを分散できるようなキャンペーンなどがあればいいのかなと思います。企業がフレックス制度を積極的に導入できたり、人々が休日を分散できたりするような整備が進むといいですね」と分散利用を促す制度づくりを要望した。

この1年、飲食店は存続をかけさまざま試行錯誤を強いられた。融資や協力金の支給など政府の対応を評価する飲食店オーナーもいる一方、自転車操業が多い飲食業の場合、早急な支給を行わなければ存続が危ぶまれることもある。緊急事態宣言が解除された今、大都市圏では感染者が微増傾向にあり収束が未だに見えない。長期戦が予想されるからこそ、場当たり的な対策ではなく持続的に飲食店の経営を支援する、対策やサポートを願いたい。

『hygge(ヒュッゲ)』
住所/千葉県船橋市本町4-42-4 高瀬ビル2F
電話番号/047-426-0089
https://hygge-hygge.com/

『ひねもす』
住所/東京都武蔵野市中町1-21-10 奥野ビル1F
電話番号/0422-27-8444
https://mitaka-hinemosu.jimdo.com/

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。