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グローバルダイニング訴訟、賠償請求は棄却。一方で「東京都の時短命令は違法」の判決

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東京都から時短命令をうけたことに対し、グローバルダイニング社が東京都を相手に訴えを起こしていた裁判で、16日判決が出た。都の過失は認められず損害賠償請求については棄却となったが、時短命令については違法であると認定された。時短命令をめぐる判決は国内初となる。判決に関して原告は実質的な勝訴だと強調したうえで、さらに追求する構えで即日控訴。感染抑制と時短営業にまつわる議論は、高裁の舞台へ持ち越された。

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104円の賠償請求。訴訟の経緯は?

ことの始まりは2021年1月7日。東京都で2回目の緊急事態宣言が発令され、飲食店へ午後8時までの営業時間短縮が要求された。これに対し、『ラ・ボエム』や『モンスーンカフェ』など計46店舗を展開するグローバルダイニング社(以下、同社)は、通常営業の継続を表明した。都は目視確認により時短営業に応じない施設を2000件以上確認するなか、113件の施設へ個別の時短要請を発出。弁明書を提出し時短要請に従わない同社に対して都は、3月18日付で当日〜21日まで営業時間短縮を行わなければ科料を課すという「措置命令書」を通達。こうして同社は全店舗で、指定期間内の時短営業に応じる形になった。

このとき命令をうけた都内27店舗のうち、26店舗は同社が経営する店舗だったこと、そしてたった4日間の営業時間短縮が感染防止策につながるのか、同社は疑念を抱いた。都への緊急事態宣言が解除された翌日の3月22日、同社は都に対し、時短命令は憲法が保証する「表現の自由」や「法の下の平等」の侵害であり、合理性に欠いた時短命令は特措法に違反することを理由に、国家賠償を求めて訴訟をおこした。

訴訟の目的について同社社長の長谷川耕造氏は、「経済的不利益に対する損害賠償請求ではなく、あくまで民主主義国家のあり方についての議論の投げかけだ」と話す。これを裏付けるように、賠償請求額は「1円×26店舗×時短営業を行った4日間」で104円である。

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都に過失なしで請求は棄却も、時短命令は違法であったと認める

時短営業や行動規制といった感染防止策の信憑性に始まり、時短命令にまつわる都の運用体制や判断基準の不透明性について、司法という公式な場に持ち出した問題提起の色が強い。

判決は、東京都に過失はなかったとし請求棄却。時短命令は違憲であるという主張は退けられ、104円の損害賠償責任も退けられた。ただし施設ごとの調査や審議が不十分なまま、合理性に欠く時短命令を下したことについて、都の判断は違法であったと認めた。

この判決結果をうけ、原告のグローバルダイニング社長長谷川耕造氏は、自社コーポレートサイト上でコメントを発表。「裁判所が都の出した命令を違法と認定してくれた点は、うれしく思う」とした上で、判決については「まったく納得ができません」と述べ、控訴について意欲を見せた。

グローバルダイニング公式ページより

今回の判決は棄却こそされたものの、「自治体による命令は合理的で慎重な議論の末に発出されるべき」という考えが明確化される結果となった。グローバルダイニングはこうした点を鑑みて、「実質的勝訴」であると強調している。

高裁での審議は、再度感染が拡大した際に政府や自治体が飲食店へどのような対応をとるべきか、その重要な指針になりうるとして、引き続き注目が集まる。

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。