飲食店は人手不足により賃金も上昇傾向。「労働分配率」の把握で人件費を適正に

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アフターコロナに向けた動きが活発になるなか、飲食店の人手不足が再び表面化してきている。人手不足解消のために、賃金の引き上げを検討・実施している店舗もあるだろう。しかし、新型コロナウイルスや食材価格高騰の影響を受けている飲食店にとって、安易な賃上げは経営を圧迫しかねない。そこで今回は、「人件費率を上げずに賃金を上げる」という視点から、飲食店の最適な人件費のあり方について探っていく。
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飲食店の適正な「労働分配率」を把握する
「求人@飲食店.COM」が実施した調査によると、東京における飲食店従事者の平均時給は1,170円(前年同月比+32円)、平均月給は268,764円(前年同月比+6,843円)と、前年に比べいずれも上昇している。こうした飲食業界の賃金上昇の背景には、人材不足が影響しているとみられる。
賃金の引き上げは、求人応募の増加やスタッフのモチベーションアップなどにつながる一方で、人件費の負担が増えてしまうため、経営が圧迫される可能性もある。そうしたリスクを抑えるためにも飲食店が把握しておきたいのが、「労働分配率」だ。
労働分配率とは、付加価値がどれだけ人件費に分配されたかを示す数値のことで、「人件費÷付加価値×100」で計算できる。ここで言う付加価値とは、企業が生み出した新たな価値のこと。これには、2通りの計算方法があり、控除法の場合は「売上高-外部購入価値」、加算法の場合は「経常利益+人件費+金融費用+減価償却費+貸借料+租税公課」となる。
人件費が増えれば、それだけ労働分配率も高くなる。高すぎる労働分配率は、経営の圧迫につながるが、低すぎれば良いというわけでもない。低すぎる労働分配率はスタッフの士気低下につながるため、“適正な値に保つこと”が重要だ。
労働分配率の適正値は、業種や事業規模により異なる。経済産業省が公表しているデータによれば、2020年度の飲食サービス業の労働分配率は74.9%。飲食店はこの値を一つの目安とし、自店舗の労働分配率と見比べてほしい。
労働分配率が明らかに同業他社より高い場合は、人件費が高く利益を圧迫している可能性がある。人件費を直接削減することで、労働分配率を下げることはできるが、この方法はスタッフのモチベーションの低下や、さらなる人手不足を招きかねない。では、どのように労働分配率を改善すればいいのだろうか。

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業務の効率化を進め、労働分配率を改善する
人件費を削減せずに労働分配率を下げるために取り組みたいのが、付加価値の向上だ。付加価値を増やすには、業務の効率化を図るのが一つの手となる。
業務の効率化を進める方法として検討したいのが、既存オペレーションの見直しだ。過剰な業務や無駄な業務があれば、取り止めや改善をし、より効率的な方法を採用したい。一人ひとりが生み出す付加価値が増えれば、それだけ労働分配率を下げることになる。さらに、業務の効率化により、少人数で店内オペレーションを回せるようになれば、人件費の削減にもつながるだろう。
また、業務の効率化を図るにあたりIT技術の導入も検討したい。例えば、セルフオーダーシステムを導入すれば、お客さん自身に注文をしてもらうようになるため、ホール業務の効率化に一役買ってくれる。ほかにも、POSレジやAIによる電話予約応対システムなど、近年では飲食店の業務効率化に役立つさまざまな機器やサービスが登場している。
付加価値を向上することは、労働分配率を抑えることにつながる。労働分配率が下がれば、さらに人件費を上げる余裕も出てくるなど、経営にとって良いサイクルが回るようになる。こうしたサイクルを回すことは簡単ではないが、まずは労働分配率を把握し、適正な値に保つことから始めてみてはどうだろうか。
