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飲食店の食中毒、夏に増える原因は? HACCPの見直しで衛生管理の徹底を

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画像素材:PIXTA

気温や湿度が高くなる梅雨から夏にかけての時期は、細菌性食中毒が発生しやすい季節だ。飲食店にとって、食中毒、および食品への異物混入を発生させることは、今後の経営に多大な悪影響を及ぼす。そこで今回は、飲食店が夏場に重要視すべき衛生管理のポイントについて、詳しく解説していきたい。

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夏場における食中毒、および異物混入について

まず、飲食店における夏場の「食中毒」とはどのようなものなのだろうか。農林水産省がまとめた下記のグラフをみると、食中毒自体は年間を通して発生しているものの、5~6月の湿度が高い梅雨期、7~10月の気温の高い時期には、特に「細菌」による食中毒の発生が増加していることが分かる。

農林水産省ホームページ「食中毒は年間を通して発生しています」より

■細菌が原因となる食中毒は夏場(6月~9月)に多く発生している
食中毒の原因となる細菌の代表的なものは、腸管出血性大腸菌(O157、O111など)やカンピロバクター、サルモネラ属菌などである。

食中毒を引き起こす細菌の多くは、室温(約20℃)で活発に増殖し始め、人間や動物の体温ぐらいの温度で増殖のスピードが最も速くなる。例えば、O157やO111などの場合は、7~8℃ぐらいから増殖し始め、35~40℃で最も増殖が活発になる。

また、細菌の多くは湿気を好むため、気温が高くなり始め、湿度も高くなる梅雨時は、細菌にとって好条件がそろいやすい季節だといえる。

■害虫・害獣被害は年間を通して多発
衛生面で飲食店を悩ませるものは、食中毒だけではない。当社が2021年11月、飲食店経営者らを対象に行った「飲食店での害虫・害獣対策や被害の実情」のアンケート結果をみると、およそ半数(49.3%)の飲食店が、害虫や害獣による被害に頭を悩ませていることが分かった。

一つの理由として考えられるのが、新型コロナウイルス感染症の感染対策だ。ここ数年、感染対策として「換気」が推奨されているため、厨房の窓や出入り口を開放している店舗が多くなっている。そのため、害虫や害獣が厨房に侵入しやすくなっている可能性はあるだろう。害虫や害獣の侵入を許してしまうと、その死骸だけでなく、毛やフンなどの異物が食べ物に混入してしまう恐れも高まる。

やはり、食中毒および異物混入を防ぐためには、当然ながら厨房や店舗内の衛生環境を清潔に保つこと、また従業員の徹底した衛生管理が求められる。そこで見直したいのが、日本では2021年6月から完全義務化されている、HACCP(衛生管理手法)だ。

画像素材:PIXTA

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HACCPとは衛生管理を「見える化」するための手法

HACCPとは、アメリカで生まれた「衛生管理手法」のことを指す。Hazard(危害)、Analysis(分析)、Critical(重要)、Control(管理)、Point(点)の頭文字をとって、HACCP(ハサップ)と呼ばれるようになった。

HACCPについてさらに詳しく説明すると、「食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法」のことを言う。

この手法は 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会から発表され、各国にその採用が推奨されているものだ。

HACCPとはつまり、衛生管理を「見える化」することを意味する。具体的な流れとしては、以下の3つの工程を実施していく。

■STEP1:衛生管理計画を作成する
計画は以下のポイントに沿って立てていく。

<一般的衛生管理のポイント>
・原材料は適切な状態で納品されているか
・冷蔵・冷凍庫内は適切に温度管理できているか
・店内の器具やトイレの洗浄・消毒・殺菌はできているか
・従業員の健康管理や衛生的な作業着の着用、手洗いができているか

<重要管理のポイント>
調理方法に応じ、メニューを3つのグループ(冷たいまま提供するもの、温かいまま提供するもの、冷却後再加熱して提供するものなど)に分類し、それぞれのチェック方法を決める。

■STEP2:衛生管理計画を実施する
STEP1で決めた計画に従って、実施記録を日誌のようにつけ、日々の衛生管理を確実に行っていく。

■STEP3:衛生管理計画を記録・確認する
一日の最後に実施の結果を記録。また、問題があった場合にはその内容を記録用紙に書き留めておく。

※詳細は「厚生労働省ホームページ:HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」参照

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」より

HACCPを最大限活用するために必要な「一般的衛生管理プログラム」とは

さらに、こうしたHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を最大限に行っていくためには、食品を扱う環境を清潔に保つ「一般的衛生管理プログラム」の実施が必須だ。

一般的衛生管理プログラムとは、製造環境の衛生管理、従業員の衛生管理、食品取扱者の教育・訓練、記録の必要性など、HACCPを効果的に機能させるための前提条件となるものだ。

公益社団法人日本食品衛生協会では、下記のポイントを重点的に整備するよう呼びかけている。

1、施設の衛生管理
2、食品取扱設備の衛生管理
3、使用水の衛生管理
4、そ族昆虫対策
5、廃棄物及び排水の取扱い
6、回収・廃棄
7、従業員の衛生管理
8、食品取扱者の教育・訓練
※詳細は「公益社団法人日本食品衛生協会公式ホームページ:HACCPを実施するために」参照

上記のポイントを振り返り、店舗内や厨房、および従業員の衛生管理が徹底できているかどうか、しっかりと振り返ってみてほしい。改善点がある場合は、迅速に対処しよう。

新型コロナウイルスの影響により、飲食店はいまだ苦境に立たされている。しかし、外食のニーズは決してなくなることはない。安心してお客を迎え入れられるよう、日頃から衛生管理の徹底を心掛けたいものだ。

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ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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