飲食店で美味しいビールを提供する極意。『麦酒倶楽部ポパイ』の達人が伝授

『麦酒倶楽部ポパイ』の2代目マスター城戸弘隆氏
アルコールを提供する店では、その多くで樽ビールを提供している。大手ビールメーカーのビールサーバーと指導によって、美味しいビールを提供する店も増えてきているが、より美味しいビールを提供したいと考える飲食店も多いだろう。
では、ビール専門店ではどのようにビールを管理し、提供しているのだろうか。1985年から両国でビールを提供し続けている『麦酒倶楽部ポパイ』の2代目マスター城戸弘隆氏に話をうかがった。
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店内奥にずらりと並ぶタップ。タップ部分以外はすべて冷蔵されている
美味しいビールを提供するために『麦酒倶楽部ポパイ』が行っていること
JR両国駅から徒歩3分の『麦酒倶楽部ポパイ』。店内に入ると、ずらりと並んだビールのタップが目に入る。『麦酒倶楽部ポパイ』には100本ものタップがあり、常時ビールをつないでいるのは70タップほど。これらを毎日専属のセラーマンが管理し、ベストコンディションのビールを提供し続けている。
「美味しいビールを注ぐには、しっかりとセッティングを行うことが大前提です。注ぎ方で味わいを変えられるのは少しだけ」
ここでいうセッティングとは、サーバーやラインの洗浄、ガス圧、ガスボリュームのセッティングなどのこと。『麦酒倶楽部ポパイ』はビールの専門店だけあって、ビールの状態を万全にできる設備を備えている。樽はもちろんのこと、それをつなぐラインも冷蔵庫の中にあり、常温で外に出ているのはタップの部分のみ。そのため、毎日すべてのタップを外して洗浄することはなく、常温のタップ部分だけ水で洗浄しているという。
「美味しいビールを注ぐには、サーバーの洗浄はマストです。しかし、洗浄の付け外しのときに汚染のリスクが高まるため、当店では一度きれいにしてセッティングしたラインはつけっぱなしにしています。ラインの洗浄は定期的に行っていますが、毎日洗浄することはありません。ラインもすべて冷蔵しているのでそれが可能になっています」
また、多彩なスタイルのビールを扱う『麦酒倶楽部ポパイ』は、それぞれのビールに合わせて適切なガスボリュームを設定しており、ガス圧やラインの長さも変えているという。
「モルト感を出してゆっくり飲んでもらいたいビールは、ガスボリュームを少なめに設定していますね。逆に、ホップフレーバーがきいたビールやヴァイツェンなど、爽快に飲んでもらいたいようなビールはガスボリュームが多めです。セッティングの目安は、液体がきれいにタップから出てくるかどうか。ガスが合っていれば変な泡は立たないですし、泡を立てようと思ったらグラスに当たる刺激だけできれいな泡が立ちます」
ビール専門店だからできることかもしれないが、タップ以外はすべて冷蔵できる環境で適切な洗浄を行い、ガス圧とガスボリューム、ラインの長さをビールの特徴に合わせるということが大切だといえるだろう。
