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コロナ禍の飲食店を支えた「雇用調整助成金」。10月以降、特例措置を縮小へ

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画像素材:PIXTA

8月31日に行われた厚生労働省の分科会で、雇用調整助成金(以下、雇調金)の特例措置を10月以降縮小することが決定した。新型コロナウイルスの影響を大きく受けた企業における従業員一人あたりの支給上限が、日額15,000円から12,000円へ、原則的な措置においては、9,000円から8,355円に引き下げられる。

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一人あたりの日額上限を縮小も、助成率は変わらず

雇用調整助成金とは、企業が従業員を休業させたときの休業手当の一部を助成する制度である。新型コロナウイルスの感染拡大以降、その影響を受けた企業に対して、助成金額の上限や助成率を引き上げる特例措置が取られていたが、10月から上限金額を引き下げることが決定した。

具体的には、直近3か月の平均売上が感染拡大前と比べて30%以上減少した企業には、従業員一人あたり日額上限15,000円を12,000円に。売上の減少幅が30%に満たない企業に関しては、上限額9,000円から原則の8,355円へ戻す。助成率については、現状の最大3分の2(大企業における原則的な特例措置)から10割(地域・業況特例)を維持する。この変更は10月から11月末までの適用となり、12月以降については経済や雇用状況を踏まえて改めて審議される。

厚生労働省「令和4年10 月以降の雇用調整助成金の特例措置等及び産業雇用安定助成金の拡充について」より

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理由は雇用保険財政のひっ迫。成長産業への労働移動を阻むとの見方も

感染拡大による特例措置が出されて初めての縮小となるが、その理由として雇用保険の財政悪化が挙げられる。感染拡大以降、飲食や、航空、レジャー関連といった需要が急減した企業で特に利用され、特例措置を設けた2020年1月以降その支給決定額は合計6兆円を超えた。

またコロナ禍に対する危機対応として、失業者を抑制する効果を発揮した一方で、成長産業への人材流入を妨げていると、特例措置に対する否定的な見方もあった。分科会で委員からは「感染の第7波の中ではあるが、以前と比べ雇用への影響は抑えられている」と上限額の引き下げに理解が示されたうえで、「まだ影響が残る産業もあるため、引き続き状況を注視し、必要に応じて対応していくべき」といった意見があげられた。

雇調金は新型コロナウイルスの影響を受けている飲食業界にとって、従業員の雇用維持の大きな支えになってきた。経済と雇用状況の回復から厚生労働省は、特例措置の縮小を段階的にすすめ、雇用保険財政の安定化を図るとみられる。今後の動きにも注目したい。

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。