10月に実施された「雇用保険料」の引き上げ。飲食店経営への影響と対策

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2022年10月1日から、社会保険のひとつである「雇用保険」の保険料率が増額された。これにより、国内のほぼ全ての産業において事業者・労働者ともに負担が増大することとなった。飲食店経営も例外ではなく、シフトの見直しや従業員への説明などが必要になるケースも想定できるだろう。今回は、雇用保険料の引き上げの内容と飲食店が講ずべき対策について解説する。正社員やアルバイトといった雇用形態を問わず、従業員を雇用している飲食店の経営者、管理者は一読されたい。
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雇用保険料とは? 加入対象、適用事業者、対象賃金をおさらい
雇用保険とは、労働者の生活維持、雇用安定、転職・就職支援などを目的に設けられている社会保険制度だ。さらに雇用保険は労働者が失職・求職した場合に3か月~1年受け取れる「失業等給付事業」と雇用安定・能力開発事業に使用される「雇用保険二事業」に大別できる。
雇用保険料とは、雇用保険における「掛け金」のことだ。「失業等給付事業」は雇用主と従業員の両方が折半し、「雇用保険二事業」については事業主のみが負担する仕組みとなっている。普段から雇用保険料を意識している人は少ないと思われるが、飲食店の経営者・管理者、従業員のどちらも、店舗や自身の収支を正しく理解するためには最低限「雇用保険料の加入対象者」と「対象となる賃金」について知っておいて損はないだろう。
■雇用保険の加入対象者(すべてに該当する者)
・最低31日以上の雇用が見込まれている者
・1週間で20時間以上働いている者
■雇用保険の適用事業者
・労働者を1人でも雇用する事業
上記に当てはまる労働者であれば、雇用保険の対象である「被保険者」となる。会社役員や個人事業主(業務委託含む)は雇用とは見なされないため、被保険者とはならない。
■雇用保険の対象となる賃金(例)
・通勤手当
・住宅手当
・家族手当、子ども手当
・技能手当、資格手当
雇用保険料の引き上げ内容とその影響
雇用保険料の引き上げの要因としては、新型コロナウイルス感染症の拡大によって雇用環境が悪化し、雇用保険の支出が増大したことが挙げられる。2022年は2段階で雇用保険料が引き上げられており、4月には事業主が負担する「雇用保険二事業の保険料率」が引き上げられた。
今回2022年10月に実施された雇用保険料の値上げによって、飲食事業が該当する「一般事業」の事業主と従業員の負担率はそれぞれ以下になった。
■雇用保険料
・事業主:0.65% ⇒ 0.85%
・従業員:0.3% ⇒ 0.5%
内訳は以下の通りだ。
単純計算にはなるが今回の保険料の引き上げによって、月給が30万円の労働者の負担額は「月額900円 ⇒ 1500円」、事業主は「月額1950円 ⇒ 2550円」となる。実は今回は保険料引き上げの第2弾であり、2022年4月にも事業主負担の雇用保険料が0.05%引き上げられている。
段階的な引き上げのためその影響を感じにくいかもしれないが、特に事業主負担は昨年と比べると確実に大きくなっているといえるだろう。

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雇用保険料の引き上げへの対応・対策は?
従業員への対応としては雇用保険料の引き上げの正しい説明がマストだ。従業員の多くは雇用保険料の引き上げについて把握していない可能性が高いため、単純に「手取り額が減った」と印象を抱かれてしまう可能性があるからだ。前述した改定内容とともに「新型コロナウイルス感染症対策によって財源が不足した影響」などの理由も加えて説明することで、モチベーションの低下などを抑止すべきだろう。
今後もさらなる社会保険料の引き上げが懸念されている。事業主としては人件費の増大を考慮して、業務効率化を検討する必要があるだろう。タブレット端末や券売機、配膳ロボットの導入など「少ない人数で利益を上げる」方法は少なくない。それらのツールやサービスの導入を支援する制度「IT導入補助金」などを利用することで、イニシャルコストを抑えながら雇用保険料の引き上げに対応し続ける必要があるのではないだろうか。
