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プラスチック新法施行から1年。スタバやマクドナルドなどが導入した「紙ストロー」のその後は?

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画像素材:PIXTA

2022年4月1日、深刻化する海洋プラスチック汚染などの対策として「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」が施行された。同法律は「プラスチック新法(新プラ法)」とも呼ばれ、幅広い産業で対応が求められることになった。

飲食業界はプラスチック新法の影響が大きい筆頭産業のひとつだ。飲食業界の国内外のリーディング企業の多くは同法律の施行前から様々な取り組みを行っており、いち早く成果と課題を明らかにしている。今回は代表的な企業の事例と、今後活用が増える可能性があるストローの新素材についても解説する。

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チェーン店が仕掛ける「脱プラスチックストロー」の3つの事例

プラスチック新法では計12種類の製品が「特定プラスチック使用製品」に指定され、排出を抑制することが求められている。飲食店と大きく関わる製品としては、フォーク・スプーン・マドラー・テーブルナイフ・ストローが挙げられる。

特に「ストロー」は消費者にとっても身近なプラスチック製品であり、多くの企業が先進的な事例として取り組んでいる。

■マクドナルド
『マクドナルド』は「2025年末までに提供用容器包装類を再生可能・リサイクル素材に変更する」ことを目標に掲げている。2022年10月には神奈川県と京都府内の全店で紙ストローと木製カトラリーの導入を開始。全国約2,900店舗にて順次導入を進めている。同社の試算によると、紙ストローと木製カトラリーの導入によって年間約900トンのプラスチックが削減される見込みだ。

なお、ストローの原料(紙)、個包装の紙、カトラリーの木材は環境や社会に配慮した「FSCⓇ認証」の素材を使用。また紙ストローは、紙の味やノリの臭いを抑えるために約2年間、サプライヤーと研究開発を行ったという肝入りの製品だ。消費者からは先進的で歓迎するという風潮がある一方、当初はSNSなどで「唇にくっつく」「感触が良くない」といったネガティブな意見も見られた。現在でもマックシェイクや一部の子ども用商品にプラスチックストローを使用しており、希望すればプラスチックストローをもらえる。

■スターバックス
『スターバックス』は新プラ法が施行される前から、環境保護に対する取り組みを実施している。主だったものでは、2020年1月から紙製ストローを段階的に導入し、従来プラスチックカップで提供していたアイスコーヒーとアイスティーを、ペーパーカップとストロー不要のリッドでの提供に変更した。

また2021年9月から、フラペチーノの全商品に使われている口径の太いストローをすべて「FSCⓇ認証」の紙素材で提供している。同社はこれにより、年間約2億本分のプラスチックストローの削減につながるとした。使用感に対して不満の声は存在するが、紙ストローを拒否した場合にもらえるプラスチックストローも、生分解性プラスチックを使用した環境に配慮したものとなっている。

同社では2030年までに「廃棄物・CO2排出量を50%削減」という目標を掲げ、全世界で持続可能な社会に貢献できる取り組みを加速している。2022年6月には、店内利用に限りアイスドリンクの「フタなし」での提供を開始したが、2023年3月からは国内の8割に当たる1,500店舗で繰り返し使える店内用グラスも導入した。利用者に「社会に貢献する企業」としての認知も広がっており企業価値をさらに向上させている。

■銀座ルノアール
『喫茶室ルノアール』や『ミヤマ珈琲』などを首都圏を中心に展開する「銀座ルノアール」では、2020年8月から全店舗でプラスチック製ストローの提供を廃止。紙製ストローに切り替えて提供している。創業から50年以上を経ている老舗だけに、紙製ストローの導入に対してSNSでは驚きの声も多かった。同社では、「今後も、株式会社銀座ルノアールは、心を満たす『おもてなし』を通じて、『地球上の誰一人として取り残さない(Leave no one behind.)』、よりよい世界の実現の為の一助となるよう、経営を実践していきます」とのコメントを発表している。

画像はイメージ。画像素材:PIXTA

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飲食店におすすめの新素材ストロー4選

前述した事例のいずれにおいても、現状は「紙ストロー」に対する不評が目立つ。使い心地の向上は今後の課題といえるだろう。家庭用であれば、洗って繰り返し使える金属やシリコンなどを素材としたストローも選択肢に入るが、飲食店で提供する場合は衛生面の問題が立ちはだかる。今後は「使い捨て可能」、「水に強い」といったことはもちろん、「口当たりがなめらか」、「飲み物の味を変えない」などの条件を満たす素材に需要が高まりそうだ。

では現状、飲食店で採用されている紙素材以外のストローにはどのようなものがあるのだろうか。以下に紹介する。

■バイオマスストロー
サトウキビやトウモロコシといった植物由来のバイオマスプラスチックを主原料とするプラスチックストローは、バイオマスならではの「カーボンニュートラル特性」によって焼却してもCO2の濃度に影響が少ないという特長を持つ。国内では『ミスタードーナツ』のほか、多くの飲食チェーンでも採用されており、従来のプラスチックストローの有力な代替製品だ。

■草ストロー
カヤツリグサ科の植物「レピロニア」の茎を原材料にしたストロー。水が染み込むと耐久性を増す素材でふやけにくく、口当たりも良好なのが特長だ。

■米ストロー
米とコーンスターチで作られているストロー。口当たりが良く、仮に食べてしまったとしても問題はないのはもちろん、廃棄する際は植物の肥料にすることもできる。

■コーヒー豆ストロー
コーヒーを抽出した後の「コーヒーかす」を原料の一部に使用したストロー。紙ストローのように液体でふやけることはないが、原料であるコーヒーの香りがほのかに香るため、同じコーヒー系のドリンクに適している。

「食べられる」ストローも! 今後の代替製品に注目

ほかにも、製菓会社のブルボンからはストローのように「吸い上げる」機能をもたせたクレープクッキー「コロネクッキー」が業務用商品として販売されている。コールドドリンク専用で、耐水性はシェイクやスムージーなどでは30分、ソフトドリンクでは15分とのことだが、カフェメニューのトッピングとして添えれば、消費者に新たな体験を提供できるだろう。

新素材の開発や可能性の研究とともに、今後も脱プラスチックに向けた新しい取り組みが行われると予想される。サステナビリティへの意識が高まる今、話題性という点でも引き続き注目していきたい。

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ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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