三つ星中国料理店『茶禅華』、料理の世界観を支える二人のサービスパーソン
まかないは研修の場
『茶禅華』というレストラン全体として若手が料理やサービスを学ぶために行うトレーニングの一つは、日々のまかないだという。
上野 うちはまかないを長い一つのテーブルで食べていて、基本的には若いサービススタッフに運んでもらう。その場をサービスの練習の場だと考えて、料理を丁寧に出す×営業日数やると、ある程度の積み上げはできますね。箸を置く作業、コップを置く作業。「水がコップから一滴漏れた」がないようにする。
大下 厨房でいうと、主菜・副菜・スープを作るスタッフがそれぞれ一人ずつチームになって、決められた時間までに全員分きちんとテーブルの上に並べなきゃいけない。人数も作るものも決まっているものを時間通り仕上げられないようだったら、営業中にそれよりいい仕事は絶対できないよと。営業中はイレギュラーなことが起きるから。そういうところも含めて、ホールもキッチンもまかないをトレーニングの場のひとつと捉えています。クオリティに関してもその場で話し合いをやりますし、そのためにも、まかないはきちんと座って集中して食べることが重要になります。
上野 まかないを作ることが若い料理人の練習の場だとすると、20人前の料理を運んでテーブルセッティングするのは、若いサービスマンの一つの仕事だと思うんですよね。まかないはそういうレストランの基本を学ぶ場だと思います。

『茶禅華』のまかない風景。お昼に従業員全員が一つの長テーブルでとるまかないが、若いスタッフの修業の場でもあるという。左から3人目がシェフの川田智也さん
サービスを目指す人のために
サービスを今後目指す人たちのために、サービスの醍醐味について聞いた。
上野 サービスマンって対面してその人を感じ取らなきゃいけないので、多分とても向き不向きが大きく出てくるものだと思うんですよ。でもそこにサービスマンとしての魅力があることを僕たちが伝えていく必要があると思っています。料理人って皿の上で表現できるからめちゃくちゃ憧れますよね。じゃあそれに対して僕らは何の努力をするのか。料理人と違って僕らにはプロダクツがない。
大下 サービスマンは黒衣と言われてるじゃないですか。でも、黒衣が仕事できるのって、演者と前もっての打ち合わせをやってずっと信頼関係を築いてるからこそ、何も喋らなくても黒衣ができるわけで、そういう信頼関係を築いていけるサービスの楽しさってのはあると思うんですよね。
上野 お客様に楽しんでもらえるようにどうすればいいかを僕らが考えて、それを具現化してやっていくこと。『茶禅華』らしいサービスとは何なのかをずっと求めていると思います。皿の置き方一つから。でも、理想論でいくと、お客様が満足して帰られることが最強じゃない?
大下 そうね、そのためにできることは全部やるということですね。
その店らしいサービスを行動と言葉で創る。その「形のないもの」が大きな役割を果たしていることは、訪れたゲストが最もよく知っているはずだ。
『茶禅華』
所在地/東京都港区南麻布4丁目7−5
電話番号/050-3188-8819
席数/30
https://sazenka.com/
大下太洋(おおした・もとひろ)
『茶禅華』マネージャー。福岡県出身。恵比寿にある、パリの高級精肉店『ユーゴ・デノワイエ』ほか都内レストランのサービスを経て現職。
上野和寛(うえの・かずひろ)
『茶禅華』シェフソムリエ。鹿児島県出身。20歳で美容師の職に就き、その後、飲食業に転向、渋谷のワインバーの名店『シノワ』ソムリエを経て現職。
