8坪月商920万円の『炭火串焼と旬野菜 きわみ』。目指したのは「絶対失敗しない店」
お通しのもつ煮込みは食べ放題! 秘策は「サブスク契約&大量仕入れ」
さらに驚くのが、お通しのもつ煮込みが食べ放題というシステムだ。しかもお客一人ひとりにお通しとは思えぬほどのボリュームで提供される。具は野菜以上にもつがたっぷりで、どうやって採算を取っているのか気になってしまうほどだ。
ここには一つのストーリーがある。コロナ禍、取引先のもつ業者が大打撃を受けた。新店出店にあたり、ちょうど仕入れ量の増加を検討していた阿波氏は、その業者との契約内容を見直すことに。その際、キログラム単位の契約ではなく、毎月20万円(その後増額)を定額で払い、必要な時に必要な量を仕入れるサブスクリプション式の契約を交わしたのだ。
「もつは、タンやカシラ、ハラミなど決まった部位が人気で売り切れやすいのですが、それ以外の部位は売れ残って業者側も捨ててしまうことが多い。そういった部位も含めて大量に仕入れることで、原価率を抑えつつ提供できています」
さらに、2023年3月にはこのもつ業者を買収。毎月一定額の給料を支払いながら、株式会社KIWAMIが経営することとなった。阿波氏は「現在もつの原価率は30%程度ですが、工夫次第で10〜20%程度に下げられると思います」と目論む。
このほかにも、陳健一氏のレシピを踏襲した「陳麻婆豆腐」(580円)や、紀州備長炭で焼き上げる焼鳥、元共同創業者の実家で育てている八ヶ岳のオーガニック野菜を使った野菜スティックなど、目玉となるメニューを取り揃える。主なメニュー開発は、腕の良い料理人でもある従業員の自由な発想に任せているという。
坪月商を上げるなら「キッチンは狭く、席数と営業時間を最大限に」
1坪当たりの売上が100万円以上の『炭火串焼と旬野菜 きわみ』。このような繁盛店を生み出した背景には、阿波氏の「成功する店ではなく、絶対失敗しない店を作る」という姿勢がある。
「そのために、満席にならなくても黒字化する仕組みを構築しました。ポイントは、キッチンとホールに一人ずつ従業員がいれば回るような、比較的コンパクトな規模感の店にすること。キッチンは狭く、その分なるべく多くの席数を設けて、営業時間を長くしています」
つまり、抑えられるコストは極力抑えたうえで、売上に直結する要素を最大化するというわけだ。現在の営業は12時から深夜の3時まで。オープンから22時まで入るスタッフが2人、17時からクローズまで入るスタッフが2人で、ピーク時には4人体制になるようシフトを組む。通し営業で1日当たり平均100人が来店、最高で160人ほど入ったこともあるという。