恵比寿の無人ホルモン店『naizoo』が語る「5坪の可能性」。複数の販路でトータル100点を目指す
省人化の極みともいえる「無人販売」は、近年の飲食業界における大きなトピックの一つ。しかし、本当に設置するだけで経営が成り立つのか、防犯対策はどうしているのか、など見えない部分も多い。そこで今回は斬新なブランディングで注目を集める恵比寿の無人ホルモン店『naizoo ホルモンショップ』の代表・蒲池章一郎氏に、無人販売の実態とその可能性について聞いた。
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無人販売は「安さ」と「商材」が肝。量販店との差別化が第一ステップ
「うまいホルモンがある店」。そんな謳い文句を聞けば、煙がもくもくと立ち上る七輪を前に、仕事帰りの会社員で賑わうガード下の大衆焼肉店を思い浮かべてしまうのは、もはや時代遅れなのかもしれない。
ピンク色に輝くネオンに打ちっぱなしのコンクリート壁。そんな流行りの韓国カフェさながらの店構えを目にし、ここがホルモン販売店であるなどと誰が想像するだろうか。しかし店内に並ぶのは、ミノ、シマチョウ、ハートといった食材や、それらを加工したメニューの数々……。
「ホルモンを通して、美しく健康的な日常を提供する」をコンセプトに、2021年東京・恵比寿にオープンした『naizoo ホルモンショップ』は、黒毛和牛の卸問屋から直接仕入れた新鮮なホルモンを無人で販売している。
仕掛け人は、蒲池章一郎(かまち・しょういちろう)氏。以前は店舗展開型の飲食店を率いていた蒲池氏が、“ひとりで完結する飲食ビジネス”へとシフトチェンジする中で目をつけたのがホルモンの無人販売だったという。
「長年飲食の仕事に従事してきたものの、僕自身は料理人ではないし、じつは接客もそんなに得意じゃないんです(笑)。だから、小売というビジネスモデルには前から興味がありました。ただ身体はひとつ。小売に専念するとほかに何もできなくなってしまう上、休めば売上はゼロ。その点、自分がいなくても売上が見込める無人販売の仕組みは有用だと感じたんです」
これまでの経験から肉の仕入れには自信があったという蒲池氏は、なかでも焼肉やハンバーガーのようにメジャーブランドのイメージが定着していないホルモンに的を絞った。無人販売において、商材の差別化こそ肝だと考えたからだ。
通常の飲食店では、メニューや味以外にも、接客、内装、イベント、使い勝手など、さまざまな面で他店と差別化できるが、無人販売で提供できる付加価値は圧倒的に少ないと蒲池氏は話す。
「基本的には『価格』と『商材』がすべてです。だから人件費をかけずに販売価格を抑え、スーパーやチェーン店では手に入らない高品質なものを提供する。どこでも買えるものを多少安く売ったところで、わざわざ買いに来てくれませんからね」
『naizoo』の主力商品は、屠畜から15時間以内に−60℃で瞬間冷凍した鮮度抜群のホルモン。生の食材だけでなく、管理栄養士や元星付きシェフ監修のもと加工したさまざまなメニューもそろえ、新しい食べ方を提案している。こうした独自性の高い商品を広く周知させ、自然発生的にムーブメントを起こすためにも、若年層の取り込みが必須と睨んだ蒲池氏は、これまでのホルモンのイメージとは真逆のブランディングに踏み切ったというわけだ。