恵比寿の無人ホルモン店『naizoo』が語る「5坪の可能性」。複数の販路でトータル100点を目指す
奇抜なブランディングは話題を呼び、無人販売のみで約200万円/月を売り上げたことも
無人販売最大のメリットは、複数の事業を同時に展開できること
そんな無人販売を謳う『naizoo』だが、じつはバックヤードには厨房を備えている。さらに約5坪という店舗内に角打ちスペースを設け、蒲池氏が在店する時には簡単なツマミを提供することもあるという。ここにも彼なりの“ひとり飲食ビジネス”の理論が隠れていた。
「“5坪”と“身体ひとつ”という限られた条件の中で、どれだけ販路を増やせるかが勝負」と話す蒲池氏は、角打ちスペースという最低限の設備で客単価アップを見込みつつ、裏の厨房では、別ブランドで展開するゴーストレストランのデリバリー商品の調理を行っている。小売を無人化することで空いた身体を使い、別のビジネスを“同店舗内”で“同時に”行う戦略だ。
「無人販売だけで100点満点の売上をつくるのは難しいかもしれませんが、小売、デリバリー、テイクアウト、角打ち、通販、それぞれの販路で合計100点にすればいいという考え方です」
蒲池氏曰く、それは売上拡大の手法であり、リスクヘッジでもあるという。つまり、同時に複数のビジネスを展開することで時代やライフスタイルの変化に合わせたさまざまな提案ができるため、常にトータル100点をキープできるという理論。無人販売はあくまで売上手段の一つなのだ。

店のロゴなどは蒲池氏のオリジナルデザイン
もし売却することになっても、最低限のインフラが整っていれば買い手がつきやすい
とはいえ、恵比寿の一等地にこれだけ攻めたブランディングの店を出すともなれば、少なからず躊躇はなかったのだろうか。
「もともとギャンブラーな一面はある(笑)」と笑って見せながらも、「リスクを完全にゼロにはできない。経営者は『起こり得るリスクをいかに軽減させられるか』だけを考えるべき」と蒲池氏は続ける。
「確かに、もし斬新なホルモン店一本で事業を賄おうとすれば、より大きな売上が必要でしょう。高いテナント料を支払い、設備を整えた手前、万が一軌道から外れた時のダメージは大きい。もちろん勝機があるとはいえど何が起こるかわからないのがこのご時世ですから。
でも、キッチンや角打ちスペースを備えておけば、いつでも業態変更できるというリスクヘッジに繋がる上に、もし売却することになっても買い手がつきやすい。初期コストはかかりますが、確実に回収できるなら結果的に支出は最小限に抑えられます。飲食店においては、それなりのインフラを備えておく方がいいというのが僕の持論です」
