「海外でシェフとして生きること」シンガポールで活躍する2人の日本人シェフの挑戦(後編)
人々の多様性に触れられたことがシンガポールでの収穫
シンガポールで企業が外国人を雇うにあたっては政府に書類提出の必要がある。また、給料はビザごとの基準を守る必要があるという。
「シンガポールで働く際の基本的な就労ビザは、Employment Pass(EP:エンプロイメントパス)とS Pass(エスパス)の2種類です。『日本人を雇いたいんだったら給料をちゃんと払いなさい。日本人を雇う必要がないなら、自国民を雇いなさい』というシステムです。自国民を雇うよりも利点があるというエビデンスが要るというか、シンガポールの国益に沿う形でないとパスは取れません。ビザごとに給料の最低額が決まっているので、十分な履歴書やスキルを持たない若い人は来るのが難しいかもしれません。
うちはシンガポールの普通の会社に比べれば労働時間が長くて、その分残業代は払っているんですけど、シンガポール人は総じて、働くパッションが穏やかというか弱めに感じられます。一方、マレーシア人は結構ハングリーな感じの人が多い。
労働条件も、国民性みたいなところも、色々違って苦労しました。でもこれだけ苦労したのは、自分が外国人だからだろうと思います。シンガポール人だったら恐らくこれほど大変ではないんですよ。自分たちが属してるコミュニティから自国民を雇えばいいだけですから」
シンガポールでレストランをやることの良い点、また課題はどんなことだろうか。
「シンガポールで人々の多様性に触れられたことは収穫でした。日本だとあまり意識することのない宗教によるNG食材、アレルギー対応も含め、国ごとに特色がかなり違うと感じます。日本で牛肉NGはまずないですけど、こっちだとバンバン来る。席に座ってから乳製品NGとか普通に言われる。大変ですよ。でも色んな人がいるこの国で、こういう場合にはこういう風にやった方がいいみたいな対応力は、おかげさまでかなりついたかもしれないです。その対応力は違うことに応用できると思っています」