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時給900円から年商7億円に! 新業態『三茶 貝介』も絶好調のけむり「急成長の秘密」

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ABCビルの前にて左からけむり統括の髙本悠司氏、『三茶 貝介』店長の荒井達也氏、小松氏、スタッフの河野氏

「お客様を楽しませることを追求する集団」を目指した結果、繁盛店に

その後、主力である『炭火串焼 けむり』を吉祥寺、八王子、立川など中央線沿線を中心に展開。焼鳥店の多店舗展開が成功した。この成功の秘訣を尋ねると「会社の理念として掲げている『お客様を楽しませることを追求する集団でいよう』ですかね」と返ってきた。

「この理念は、最初に融資を受ける際に、銀行に提出した事業計画書にも盛り込んでいたものです。お客様にお店を使っていただいて、喜んでいただけば、街の人たちにも必要なお店になれる。そうすれば自ずと潰れることはないのではないか。お金の計算よりも前にとにかく目の前のお客様を喜ばせることが大切だと考えました。今でもスタッフにこの事業計画書を見せることがあるくらい、熱い思いが込められています」

けむりに次なる転機が訪れたのは2013年。焼鳥から一転、魚料理に特化した新業態として渋谷に『魚きんめ』をオープンさせる。その後2014年には三軒茶屋に『和食ごしき』、2018年には同じく三軒茶屋に『鮨かんてら』を開業。主力である焼鳥以外の業態を次々と展開した。

この理由について小松氏に尋ねると「鳥インフルエンザなどがあり、焼鳥だけだと経営的にリスキーだった」と明かす。

「焼鳥の方でもなるべく、仕入れ値が上がったらこちらで吸収せずに、その分を上乗せして売るようにしていました。また、なるべく単品ではなく、コース売りをして、コース全体で原価のバランスをとるようにもしていますね」

そして、さらに対策として打ち立てたのが、新業態への挑戦だった。

「焼鳥ではない業態を作りたいと思っていたとき、タイミングよく友人経由で和食の料理人がうちに入りたいという話が入り、『魚きんめ』をオープンさせました。『鮨かんてら』の開業については、今とは少しコンセプトが違うのですがチェーンの鮨屋と高級鮨屋の間で若い人も来てくれるような鮨屋があったらいいと考えてのことです。自分自身、鮨が好きだったというのも理由の一つにありますが。

また、焼鳥では客単価8,000円だと高いと思われる場合が多いですが、鮨だと安いと感じてくださる方が多いことも気になって。3か月ほど飲食人大学で鮨職人に必要な技術を身につけ、スタッフたちにも丁寧に教え込んでいきました」

ミルガイ、アオヤギ、小柱、ツブ貝など、魚居酒屋ではなかなかお目にかかれないネタをケースに並べている

目の前のケースから選んだネタで酒が飲める新感覚酒場『三茶 貝介』

そして2022年12月、『和食ごしき』『鮨かんてら』と同じABCビルに『三茶 貝介』がオープン。同店はリスクヘッジ目的というよりも、オーナーからたまたま安くテナントを借りられる話をもらい、せっかくだから何か新しいことに挑戦したいと開業した店だ。スタッフからも新業態について意見をもらう中でたどり着いたのが、貝に特化した店だった。

「三茶近辺だと海鮮居酒屋はいくらでもありますよね。けれど、珍しい貝が、鮨屋のクオリティで食べられるお店はない。ただ、貝だけだと貝が苦手な人もいるので間口が狭すぎる。そこで軟体動物、甲殻類、魚卵に絞ることにしました。自分自身、ケースから選んだネタで酒を飲みたいと思っていたんですよ」

魚介の「介」は三枚おろししない魚介類を指すそうだ。このことをスタッフから教えられ、何屋か一目でわかる「貝介」を店名にした。

貝類に絞らなかったのには、仕入れ面でのリスクヘッジもある。貝だけだと最悪、水揚げされないこともあるが、イカやタコなどの軟体動物は高騰しても常に仕入れは可能だ。

仕入れは系列店『鮨かんてら』のスタッフ二人が毎朝豊洲市場まで出向いており、『和食ごしき』時代からの付き合いで業者を紹介してもらうことも多いそう。何かが不足しても代わりのネタを仕入れやすいという。

「貝介ミックス盛」(一人前2,000円)は鮨屋同様、ネタを1種類ずつ鮨ゲタにサーブしてくれる。白ワインはグラス690円〜

同店が特徴的なのは、カウンター鮨のような内装でガラスケースにネタを常時15種類ほど綺麗に並べ、鮨屋同等の丁寧な仕込みで、ネタを一種類ずつお客に提供していること。

酒類はビールや日本酒も揃えるが『和食ごしき』『鮨かんてら』が日本酒メインということもあり、コンセプトが被らないよう、また新しいことに挑戦したかったことから『三茶 貝介』ではナチュラルワインを重点的に置く。セレクトは『代々木 鳥松』でもお世話になっているという恵比寿のBMOに依頼したという。熱心な海外の生産者が手がけるワインとBMO独自の基準を満たしたワインのみをセレクトしているそうで、白ワイン7酒類、スパークリングワイン1種類、オレンジワイン3種類、ロゼワイン2種類、シャンパン3本、ケンゾーエステート4種類を揃える。

料理に関してはどうしても仕入れの振れ幅が大きく、価格設定もなかなか低くできないため、ドリンクで値頃感を出しているのも特徴だ。キリンクラシックラガーやサッポロ赤星の大瓶が600円、烏龍割セットやレモンサワーセットなど約3杯分が楽しめる「呑み助セット」1,100円など、呑兵衛にはありがたいドリンクセットもある。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。