飲食店ドットコムのサービス

時給900円から年商7億円に! 新業態『三茶 貝介』も絶好調のけむり「急成長の秘密」

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

鮮度が良い気仙沼産のモウカザメを行者ニンニクの醤油漬けで味付けした「レバ刺し風鮫ハツ」1,200円など珍味も揃う

「一目で何屋かわかるお店にすること」が大切

結果的にこのコンセプトは「ほかに代えがきかない店だ」と評判を呼び、18〜21時の時間帯はほとんど予約で埋まっている。客単価も6,000円を想定していたが、7500円と上振れした。月に4〜5日休みを確保しつつ、10坪で月商350万円を売り上げる。

新業態については「一目で何屋かわかるお店にすること」が大切と話す小松氏。「この店は何の店なのか、ターゲットや客単価、利用シーンも想定して明確で簡潔に答えられるようにしています」と、その成功の秘訣を明かしてくれた。

また、コロナ禍前よりもお客が1軒に支払う金額が上がっていることも指摘。「客単価6,000〜10,000円のミドルアッパー、それ以上のアッパー業態で粗利益を確保できるものを考えています」と価格帯設定も大事だと話す。コロナ禍を経て『鮨かんてら』も席数を18席から8席に減らし、コースの値段も上げ、客単価20,000〜22,000円になったというが、仕入れるネタを銀座の鮨屋で扱うような高品質なものに限定し、結果的に売上を伸ばしている。「一つのものに対して注力できるか」が大事なポイントのようだ。

ちなみに今回、けむりとしては初めて会計をキャッシュレス限定にした。初期費用、ランニングコスト、決済手数料などがネックだと考える飲食店経営者も多いが「現金だとスタッフの両替入金の手間がある。その時間が1日20分だとしても、その分ゆっくり休んでもらったり、仕込みをしっかりしてもらいたいと考えました。また、キャッシュレスだと売上の管理も楽になりましたし満足しています」とメリットを話す。ミドルアッパー業態だとクレジットカードで支払いを行う人も多いため、現時点で困っていることはないようだ。

スタッフは2人体制でもまわるよう厨房内から手が届く範囲に4名席も含め席を配置し、ホールに出ることがまずないような設計にしてある

新規出店よりも従業員が長く快適に働けるお店を目指して

現在、月商6,000万円、年商7億円超えと勢いに乗っているけむり。しかし、今後は多店舗展開よりも、従業員の働きやすさを追求したいと、小松氏の目は働く仲間たちに向かっている。

「あくまでも働く人の環境を良くするために利益率を良くして、還元したいと思っています。スタッフも子供がいたりするし、習い事をやらせてあげたい、行きたい大学に行かせたいと考えるライフステージになってきました。また、独立したいという人間にとっても、稼げる仕組みを考えたいですし、独立支援の制度を設けたいとも思っています。それぞれの働き方の希望に添える会社に向かっていきたいですね」

飲食業界を取り巻く労働環境についても危惧しているようで「自分のところだけでもどうにかしていきたい」と熱く語る小松氏。2017年ごろからは月8日休み、夏冬それぞれ3日間休暇、有給を年間5日、トータル107日の休日を設けるなど働き方改革を行なった。

人気店を経営しているとはいえ、人手不足の波は小松氏も感じているそうだ。その上で長く働いてもらう環境づくりが大事だと話す。

「面接で大事にしているのは、一緒にご飯を食べにいく友達になれるかどうかを判断軸にしていること。中学や高校で普通に出会っていたら、友達になっているか、というフィーリングも大切にしています」と独自の面接基準も教えてくれた。

そして、小松氏は従業員への利益還元のため、飲食店経営の側、大家業も営んでいるという。「吉祥寺の物件を10年賃貸で借りた時に『こんなに賃貸で大金を払うくらいなら、購入した方がいい』と思って。2015年ごろから物件を買って、現在は3つの小さなビルと2つの区分所有があります」と小松氏。毎月200万円程度の家賃収入ということで、そこで得た利益を従業員のボーナスに当てているというのだ。

インタビュー中何度も小松氏が語っていたのが「本当に人が大事」という言葉。「自分だけではお店ができないし、周りの人たちに本当に助けられている」と何度も感謝の気持ちを述べていた。従業員が「あんなに明るくて元気な人はほかにいない。僕たちもそれに刺激を受けている」と話していたのも印象的だった。

ちなみに現店長は3回目の出戻りだそうで、ほかの飲食店へ転職した際も、何度か小松氏に飲みの誘いを受けて、関係が続いていたという。もちろん経営的な視点も繁盛店を生み出すためには重要だが、やはりスタッフとの信頼関係、楽しく働ける職場を作ることが、結果的にお客からも愛される飲食店になるのだろう。

『三茶 貝介』
住所/東京都世田谷区三軒茶屋2-15-14 ABCビル111
電話番号/03-6453-4361
営業時間/16:00〜22:00(L.O.21:30)
定休日/なし
坪・席数/10坪18席
公式インスタグラム

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ

Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。