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三軒茶屋『あかんぼ』を坪月商35万円に導いたコロナ禍の「業態転換」【連載:居酒屋の輪】

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地域のニーズに合わせて柔軟に業態転換できたのも料理の基礎があればこそ

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尊敬できる人との出会いで磨かれた人間力

「20代前半の僕は本当に生意気でした。それでも軽口を叩くような接客をお客さまが面白がってくれて、プライベートでも仲良くしてくださる方も増えました。なかでも大きな影響を受けたのは千歳烏山『我ー喰う』や渋谷『タートル』を経営している久我耕輔さんと、株式会社とりビアーの副社長・木村国治さんです。お二人ともに才能にあふれていて、人間力がものすごい。お客さまへの対応も、スタッフとのやり取りも、臨機応変というか丁寧かつケアが上手なんです。努力すれば上達する料理とは違い、そうした人間力は真似しようと思っても簡単にはできないもので……」

居酒屋で働くプレイヤー目線での人間力は、尊敬する先輩方を目指して磨いてきたそうだが「経営者としての人間力はまだまだです」と話す武居さん。『あかんぼ』が繁盛店となったことで、これまでとは異なる接客も必要に迫られているそうだ。

武居さんのSNSでの投稿。個人店では、ときには尖った対応も必要になるという

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「うちはお通しがなくて客単価は2,000円ほど、約10坪の空間に1日平均60人のお客さまが訪れます。薄利多売の経営ですので、たとえば食事1品だけのご注文で長時間滞在されると経営が立ち行きません。お客さまが増えたのはいいのですが、食後に動画を閲覧したり、酩酊状態で居眠りしたり、缶酎ハイ片手にご来店される方も出てきました」

口頭や張り紙、SNSで注意を呼びかけたところ、客層が変わり回転率が上がったそうだ。

とびっこ高菜チャーハン900円。食材費高騰もあり原価率は50%近いという

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終電近くまで働くお客さんに向けてボリュームたっぷりの食事も用意している『あかんぼ』。たとえば、とびっこ高菜チャーハンはお米だけで300グラム、具材も合わせれば400グラム近い大盛り。大きな角切りチャーシュー、ツブツブはじける魚卵、パリパリの高菜など具材が豪華で原価率も高い。こうした1品の注文だけでお客さんに長時間滞在されると、個人経営の店は利益が出ない。

愛する娘のためにも、経営を安定させる人間力を磨きたいと語る武居さん

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「僕はメンタルがそんなに強くないので『個人経営者って孤独だな』と凹むことが多くて、まだまだ人間力が足りていないと感じるばかりです。今後の目標も人間力を磨き続けること。コンセプト作り、人集め、営業、商品開発、資金調達などマネージメントの部分で人間的に成長したいと考えています!」

居酒屋経営における人間力とは何なのか? 取材前は疑問に感じていたことが、武居さんからお話を聞くことで段々と見えてきたように感じる。つまり、ここで言う人間力とはお客さんだけでなく、お店を支えるスタッフ、そして周囲の仲間や家族を幸せにするための力なのだろう。今回は武居さんの人間力と謡ちゃんの可愛さに、取材をした私自身も温かい気持ちで満たされた。

『あかんぼ』
住所/東京都世田谷区太子堂4-30-27 カーサピッコラ三軒茶屋1F
電話番号/080-1000-9996
営業時間/17:00〜翌2:00
定休日/日曜(不定休あり)
坪・席数/約10坪22席
公式インスタグラム

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。