三軒茶屋『あかんぼ』を坪月商35万円に導いたコロナ禍の「業態転換」【連載:居酒屋の輪】
コロナ禍前は20万円に満たなかった坪月商が業態転換で30万円を突破
まずは中華料理店出身の先輩から見聞きした技術、料理雑誌に掲載されていたレシピなどを参考にメニューを開発。飲食関係の常連客が多かったため、そこからのアドバイスも柔軟に取り入れていったそうだ。
「たとえば、名物の餃子はラーメン店で働くお客さまの助言で飛躍的に美味しくなりました。モチッとした皮を作っているのは、僕の中学時代の先輩です。厚手の皮に合わせて豚肉の配分を増やし、五香粉やオイスターソースで下味を付けています」
オーダーを受けてから仕込んでおいた餃子ダネに青唐辛子を加えて仕上げるなど、共通する食材を上手に使い分けてメニューを拡充。青唐餃子の場合はすり鉢状の形に包み、そこに青唐辛子マリネをトッピングできるといった変化も付けている。現在、餃子メニューで人気ナンバーワンだという。
業態転換した当時と比べて「確実に料理の味は美味しくなっているし、使う食材の幅も増えました」と話す武居さん。実際に創作中華の味を高く評価する口コミも増え続けている。
アルコールメニューの開発で大きな影響を受けたのが代々木八幡『煮込みとお惣菜スタンド ウエトミ』。そのスタイルを参考にしつつ、缶ジュースと焼酎をセットにしたサワー類の多くをワンコインで提供している。中身の焼酎を追加できるホッピースタイルで、3杯飲んでも1,000円ほどに収まる想定だ。
ホッピースタイルは新しいグラスを用意せずにお酒を提供できるのが大きな強み。店側は洗い物が減りお客はリーズナブルに飲めるWin-Winの仕組みだ。
コロナ禍前まで坪月商は20万円に満たなかったが、業態転換してから1年後、2022年の夏には30万円を超えた。その後も売上は順調に推移し、現在は坪月商35万円程度で安定しているという。以前はワンオペレーションでの対応だったが、今ではサポートスタッフも雇えるようになった。
ちなみに屋号は『あかんぼ』に戻したそうだ。初心を忘れないよう「自分はまだまだお子さま」という思いを込めた名前である。
