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3年目の若手が銀座で寿司を握る! 名門『銀座おのでら』が仕掛ける新しい人材育成システム

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明日の「昇り龍」を夢見て今日も若手は一心不乱に寿司を握る

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出てこい! 心技体を兼ね備えた「昇り龍」

こうして昨年4月に誕生した『登龍門』には、ONODERA GROUPで3年目を迎えた手子から、坂上氏の眼にかなった俊英が3名配属され、連日味にうるさい銀座の客を相手に修業に打ち込んでいる。

「板前に特に必要なのが『心』の会得です。『登龍門』は単に腕の立つ職人を育てる場ではありません。いくら手が早く仕事がきれいでも、ハートが未熟では決していい板前にはなれません。まずはお客様へのホスピタリティを学んで欲しい。例えば飲み物による違い。お酒とお茶のお客様では食べるスピードに差が出ます。そこを察知して寿司を出す順番やタイミングを案配できるか否か。『気付き』こそサービスの善し悪しの分かれ目です。まずホスピタリティを学ぶために、自分は付け場に立っているのだと自覚してほしいですね」(坂上氏)

一方で『登龍門』は寿司の技術や接客だけでなく、仕入れ、仕込み、営業、在庫管理など経営面の知識も学ぶ場でもある。「恥ずかしくない技術」「お客様への対応」「経営者としての知識」、職人としての心技体をマスターして初めて一人前の板前は生まれるのだ。

お客様を想う心を一貫一貫に込めて握る

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寿司職人としての心技体を坂上氏から認められた若手は、晴れて『登龍門』を卒業となり板前としてグループ各店に配属される。これまで2名の卒業生が誕生し、総本店、ニューヨーク店の付け場に立つことを許された。彼らは「昇り龍」と称され、若手職人の希望の星になっている。

そんな坂上親方の熱い薫陶を受けながら、明日の「昇り龍」を目指す若手職人の心意気を聞いた。

■夢のような職場で一日でも早く「昇り龍」に!
「叱られてばかりの毎日ですが、3年目で握らせてもらえるなんて、夢のような体験です。他店ではありえない機会を与えてくれた会社に心から感謝しています。絶対にこのチャンスをものにして、親方に恩返しがしたいです。一日も早く昇ります!」(山本颯人氏、3年目22歳)

日本酒は「泰斗」(一合880円)のみ。カウンターから彼らが直接注ぐ

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■お客様の言葉に支えられながら一生懸命握る日々
「『鮨 銀座おのでら』の看板を背負って握るだけに、下手な仕事はできません。一貫一貫ブランドの重みを背中に感じながら一生懸命働く毎日です。お客様から教えて頂くことも多く、付け場に立つ幸せをかみしめています。『この前より美味しくなったよ』。そんな励ましの言葉一つ一つを意気に感じながら、僕が先に昇ります!」(都川裕介、6年目29歳)

一人前の職人には素敵な笑顔も欠かせない

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フードロスゼロの実現が利益に大きく貢献

一方、ビジネスから見た『登龍門』はどうだろうか。何しろ総本店では3,300円で出す大トロを880円で提供する店だけに、採算性も気になるところだ。果たして人材育成とビジネスは両立しているのだろうか。

「『登龍門』の客単価は約7,000円ですが、立ち食い店ならではの高い回転率のおかげで、予期した以上の売上を達成しています。また、これまでの『鮨 銀座おのでら』にない新しい客層の開拓に成功しました。最近では『鮨 銀座おのでら 総本店』にも顔を出されるお客様も増えています。嬉しい誤算ですね」(坂上氏)

同店のFLコストはどうだろうか。

「総本店と『登龍門』では全く同じネタを使用しているため、セントラルキッチンでの一括仕込みが可能です。また両店の間で、オーダー状況に対応したネタのフレキシブルな活用も行えます。このような効率的な運用により、両店のフードロスはほぼゼロを達成できており、FLコストの改善に大いに貢献、利益もしっかり生まれています」(坂上氏)

客の懐に優しい人材育成の場『登龍門』は、寿司ビジネスの新たな成功例でもあるようだ。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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