3年目の若手が銀座で寿司を握る! 名門『銀座おのでら』が仕掛ける新しい人材育成システム
令和にふさわしい寿司職人育成のスタイルとは
「『鮨 銀座おのでら』は7月に、同じく銀座おのでらブランドの廻転鮨業態部門としては東京・表参道に続き国内2店舗目となる京都店をオープンさせました。現在、同じく廻転鮨業態として大阪店、ハワイ店の開店を控えています。また、高級形態の鮨業態店舗も、来春名古屋エリアにオープン予定です」と話すのは、世界統括総料理長の坂上暁史氏だ。
ONODERA GROUPの理念である「銀座から世界へ」は、着々と進捗しているように思われるが、だからこそ職人不足は、今、目の前にある深刻な問題だ。
「これまでは社内の人事異動や中途採用でまかなってきましたが、どうしても限界があります。中途採用の場合、職人の技術に問題はありませんが、『鮨 銀座おのでら』の精神を理解してもらうのには相応の時間がかかります。グループの思いを理解した人材を、どうしたら現場に安定供給できるだろうか。こうして企業内で『鮨 銀座おのでら』の職人を一から育成するアイデアが生まれ、『登龍門』の誕生へと結びつきました」(坂上氏)
坂上氏は、2013年にONODERA GROUPに入社以来、総責任者として同社の外食事業をけん引してきた。『鮨 銀座おのでら』を筆頭に、銀座おのでらブランドの店舗を世界4地域で13店舗をプロデュースし、現在までにうち3店舗をミシュラン店に導いたカリスマだ。一方で氏は現在も時間が許す限り白衣を身にまとい、付け場に立つと同時に後輩の指導に余念がない。そんな長年現場と向き合ってきた坂上氏だからこそ、寿司職人育成の難しさを痛感していたという。
「今の若い世代に旧来の徒弟制度を押し付けても、人材の育成は困難ですし、そもそも企業が採るべき手段ではないと感じています」(坂上氏)
少しでも早い時期に寿司を握りたいのが職人の心情。しかしこれまでの修業スキームでは、5年間頑張っても付け場に立つのは難しい。「自分はこの先どうなってしまうのだろう……」と不安がやる気を上回り、この世界から足を洗う若者の姿を、坂上氏もたくさん見てきたという。
「やる気のある若手が寿司を握れる場を確保し、しっかりした労務管理の下で安心して働ける職場の提供こそ、令和の今求められている人材育成の形だと思い至りました。それが『登龍門』の設立のきっかけです」(坂上氏)
