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レモンサワー発祥店『もつ焼きばん』、恵比寿店も月商1000万超え達成。多店舗展開の必勝法に迫る!

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『もつ焼きばん 恵比寿店』店頭にて。株式会社ばん代表取締役松本勝氏

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レモンサワー発祥の店として知られる『もつ焼きばん』。昭和の佇まいを残す同店には、“安くて旨い”を求めて、中高年男性はもちろん、大学生や女性客といった幅広い客が集い連日賑わいをみせている。

都内に8店舗を展開し、今年1月にオープンした恵比寿店もすでに月商1,000万円を超えた。“ばん”流の必勝法とは一体どんなものなのか?

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繁盛店を引き継いでも、同じだけの売上が上がるわけではない

『もつ焼きばん』の歴史は古く、創業は1958年(昭和33年)。創業者である小杉正氏の生家を改装した、カウンターとわずかなテーブル席のみの小さな店から始まった。常連客に愛されて改装を繰り返し109席にまで増床するなど、地域で知らない人はいない伝説的な繁盛店に育った。

しかし、創業から46年が経った2004年、中目黒駅前の再開発をきっかけに小杉氏が引退を決意。『もつ焼きばん』は、惜しまれつつも閉店した。

「このままやめるのはもったいないから、継がせてほしい」

後継に名乗りをあげたのは、創業者の実弟と娘婿の両名だった。2005年に弟が祐天寺店を開業、2006年に娘婿の松本勝氏が五反田店を開業し、2店舗にのれん分けされた『ばん』は再び歩み出した。今ではデリバリー店を含め8店舗となった『ばん』だが、その多店舗化を進めたのは、娘婿の松本勝氏が経営する株式会社ばんである。同時にのれん分けされた祐天寺店は姉妹店として、その経営を画する。

レモンサワーともつ焼きが、ばんの定番。安くてうまい、この味を求めて常連客が足繁く通う

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繁盛店を継承することは一見、手堅いビジネスに思えるが、場所が変わればそう甘いものではないようだ。

「五反田店は開業から3年経っても、月商300万円以下で赤字が続きました。引き継いだ当時は、『ばん』というブランド力があれば大丈夫だと安易に考えていましたが、そうではなかった。いくら伝説的な繁盛店を引き継いだといっても、親父もいないし出店地も違えば、ゼロからのスタートだということを身をもって痛感しました」(松本勝氏、以下同)

松本氏は『ばん』を継承する以前から、自身が創業した企業で数百軒もの飲食店を出店してきた経歴を持つ。FCの店舗出店も数多く行い、ピザーラや牛角では一時、ブランド最大の出店数を担ったほど、業界に深く精通している人物である。その経験をもとに、『ばん五反田店』の苦境を打破するためのメニュー改良やキャンペーン施策などあらゆる手段を講じたという。

「でも、なにをしても空回り。ついに万策尽きたとき、結局立ち戻ったのは親父がやっていた当時のメニューでした。昭和33年から続くこのメニューには、理屈では語れない“なにか”が宿っているのでしょうね」

全店共通の定番メニュー。創業者が考案したこのメニューには、『ばん』の真髄をなす理屈や論理では語れない「なにか」が宿っている

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このことに気づいてからは、創業者である小杉氏が築き上げた『ばん』を守り、実直に営業を続けることに注力した。その一方で、これまではしていなかった情報発信を強化した。

レモンサワー発祥の店と銘打って『ばん』の魅力をアピールしてからは、テレビや雑誌などのメディア露出が増えたり、宝酒造株式会社とのコラボ企画を実施するなど、世間からの注目を集めた。ドラマ『孤独のグルメ』で紹介されると、国内同様に人気を博す中華圏からの関心も高まり、香港や上海から出店依頼をうけるなど反響が大きかった。これまでは地域の人だけが知る小さな繁盛店だった『ばん』が、名のある老舗へとその立ち位置を変化させた。

五反田店の開業から4年目となる2010年、事業明確化を目的に『ばん』の運営に専念する株式会社ばんを設立。約10年の月日をかけて徐々に売上を伸ばし、月商1,300万円(坪月商86万円)を達成するまでに成長した。

「『ばん』は一見すると“酒飲み玄人”向けの入りにくい店構えなので、初来店のきっかけとしては常連客からの紹介というパターンが多いんです。1店舗ずつ地道にコツコツ固定客を作っていく過程が必要なので、初年度からのロケットスタートは見込めません。そうした意味で『ばん』はフランチャイズには不向きなブランドですね」

新しい場所に根を張るまでは時間がかかるが、目先の売上よりも10年20年と長く続く店づくりを目指しているという。2店舗目となる中目黒本店の出店は、五反田店の出店から8年目にあたる2014年。その後、店を増やすたびに、『ばん』らしさをますます意識するようになったそう。

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。