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飲食店の原価率の実態は? 物価高騰の影響を受け、約6割の店舗が「目標より高い」と回答

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画像素材:PIXTA

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飲食店を経営する上で重要になる指標の一つが、商品価格のうち原価が占める割合を示す「原価率」だ。一般的に、飲食店における原価率の目安は30%程度だと言われているが、ここ最近は、物価高騰などの影響もあり、原価率の上昇に悩む店舗も少なくない。そこで今回は、弊社が実施したアンケート調査の結果から、飲食店の原価率の実態を見ていく。

■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:361名
調査期間:2023年9月11日~2023年9月18日
調査方法:インターネット調査

■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち82.8%が2店舗以内の運営店舗です。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は51.5%(首都圏の飲食店の割合は67.3%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。また、回答者の経営している業態は、「居酒屋(17.2%)」、「ダイニングバー(11.1%)」、「カフェ(8.6%)」を筆頭に、分散されています。

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飲食店の現在の原価率、「目標より高い」と感じる店舗が6割

まず、「年間を通して目標とする原価率」について尋ねたところ、最も多かったのは「30%~35%未満」との回答で39%。「直近3か月以内の原価率実績」についても、「30%~35%未満」との回答が最多となっているが、その割合は29%と、目標と比較するとやや少ない。また、原価率実績については、「35%~40%」と回答する店舗も24.3%見られ、目標よりも実際の原価率の方が高くなっている状態がうかがえる。

飲食店の原価率の目標と実績(N=302)

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また、現在の原価率についてどのように感じているか答えてもらったところ、「ほぼ目標通りと感じている」と回答した店舗は29.1%。これに対し、62.1%が「目標に対して、高いと感じている」(目標に対して非常に高いと感じている=16.9%、目標に対してやや高いと感じている=45.2%)と回答。原価率をコントロールするのに苦慮している店舗が多い様子が読み取れる。

現在の原価率に対して、どのように感じているか?(N=361)

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さらに、「目標に対して高いと感じている」と回答した方に、その原因について尋ねたところ、ほとんどの店舗が「食材価格上昇(96.0%)」と回答。続く、「円安影響(輸入品)」も44.2%と高く、昨今続いている物価高騰や円安が、飲食店の原価率上昇に大きな影響を与えていることがわかる。

目標原価率よりも実際の原価率が高くなった原因は?※複数回答(N=224)

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原価率対策として、商品の値上げや仕入れの見直しを実施

原価率を抑えるために取り組んでいることについて尋ねた質問では、68.4%の店舗が「商品価格の変更(値上げ)」と回答し、最多に。次いで、「仕入れ価格の交渉・仕入れ先の変更(45.4%)」、「メニュー間での利用食材の共通化(廃棄削減)(34.6%)」、「新規メニュー開発(33.8%)」が続く。

原価率を抑える工夫として、取り組んでいることは?※複数回答(N=361)

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また、原価率を抑える対策として、上手くいった取り組みについても答えてもらった。すると、各店舗さまざまな工夫を行っている様子が見受けられたため、その一部を紹介する。

■商品価格の変更(値上げ)
商品の値上げでは、単純な価格改定ではなく、「もともと原価率の低い商品を安く売らずに適正価格にする」、「高単価商品(出数が少ない商品)の原価率を高く、低単価商品(出数が多い商品)の原価率を低く設定しバランスをとった」など、工夫をしている店舗も見られた。

■仕入れ価格の交渉・仕入れ先の変更
仕入れについては、価格が安定しない生鮮食材ではなく、「価格変動の少ない海外品や冷凍食材に変更」をした店舗も。このほか、「仕入れ業者より近隣小売店で買った方が安く同じ食材が入ることがわかり、そちらから購入した」と、食材の値段を比較して仕入先を変更したり、「大量仕入れによる価格交渉」をしたりすることで、原価率を抑えている店舗もあるようだ。

■ロス削減
食材ロス削減のため、「細かく仕込み量を調整」したり、「食材が古くなる前に調理し小鉢として提供」したりする店舗も見られた。また、「小分け冷凍や真空保存」など、食材の保管方法を見直すことも食材ロスの削減に有用だ。

このほかにも、「商品量の見直し」や「新規メニュー開発」、「セット販売・おすすめメニューやドリンクの販売促進」など、さまざまな取り組みにより、原価率を抑えているようだ。以下では、いくつかを抜粋して紹介する。

・ポーションの縮小。比較的安い旬の野菜を多めに使う(長野県/中華/1店舗)
・高額商品のメニュー化(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・おすすめメニューの変更(原価率が低い物)(東京都/居酒屋・ダイニングバー/3~5店舗)
・メニュー提示時のおすすめトークや盛り合わせの提案(神奈川県/バー/1店舗)
・品質を維持しつつ食材変更によりスープを改良、材料費を約3割削減(東京都/ラーメン/1店舗)
・ドリンクの注文数を増やすために、近隣店舗にはないメニューを導入(埼玉県/その他/3~5店舗)

今回のアンケートでは、物価高騰や円安などにより、原価率が目標と乖離している店舗も見られた。本記事では、原価率を抑えるのに有効だった取り組みも紹介しているため、原価率の上昇に頭を悩ませている店舗は、ぜひ参考にしてほしい。

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サトウカオル

ライター: サトウカオル

グルメ、ライフスタイル、ITとさまざまなジャンルの執筆を経験。現在は、ポップカルチャー系のウェブサイトでグルメ関連の記事を執筆中。趣味は、料理とネットサーフィン。ネットで気になった料理を自分流にアレンジして食べるのが最近のマイブーム。