月商は200万円あれば十分。久我山『おいっちゃ』がワンオペ営業で目指す理想【連載:居酒屋の輪】
世にあるレシピの良いところを凝縮して“独自レシピ”に昇華
料理人としての道を歩みだし2年ほどして、小林淳さんから「店舗が見つかったぞ」と連絡を受け取った野沢さん。そこから店長として『じゅん粋』を盛り上げていくことになる。
「お店を立ち上げた当初、スタッフは淳さんと自分のふたりだけ。しかも揃って鉄板焼き未経験だったんです(笑)。その中でクオリティを上げつつ『なんだか楽しい料理を作っていこう』という方向性になりました。例えば、もんじゃ焼きみたいなカルボナーラ。キノコで土手を作って、生クリームやパスタを投入する、みないな(笑)」
野沢さんは料理人になる前から、実験的な料理を好んでいたという。
「子どもの頃からカップラーメンのお湯すら分量を守ったことがありません(笑)。いろんなことを試して、美味しい法則が見つかれば、そこから新しいメニューにつながる訳です。カルボナーラにしても今はプロのレシピが簡単に手に入る時代ですから。料理本を5冊ほど買って、実際に作って、そこから良いとこ取りして試行錯誤をすれば、どのレシピにあるものより美味しいカルボナーラが完成します」
『おいっちゃ』の人気メニューのひとつ、一番出汁のパスタも既存のレシピから着想を得たという。
「出汁の旨味をパスタに吸わせるアイデアは、料理研究家である平野レミさんのものです。オリジナルレシピはもっと家庭向けの簡単な料理でした」
店では丹念に仕込んだ一番出汁や煮切り醤油を使用し、新鮮な生ウニを合わせるなど独自のアレンジを加えて提供。上品な魚介の香りと鮮烈な旨味が絡み合う、日本酒が恋しくなるほど濃厚な和風パスタに仕上がっている。
料理において野沢さんが大切にするのは、お客からの声。「美味しかった」よりも「楽しかった」を重視しているという。
「そもそも『じゅん粋』は鉄板焼きの美味しさだけで繁盛店になった訳ではありません。『お客さまの楽しさ』を第一に考える淳さんの人間力のおかげだと思っています。そうした発想は、それまでの自分にはない全く新しいものでした。自分は完全に効率重視で……例えば、営業前のミーティングで『皆それぞれ昨日できなかったことを1つ言いましょう』と提案して、そこから改善案を出すタイプなんです。いっぽう淳さんは『昨日のこういう出来事が、すごい楽しかったよね』と感想を話すタイプ。『スタッフが楽しく働いていた方が、お客さまも楽しくなる』という考え方でした」
アメとムチのバランスが良い塩梅に噛み合っていたからこそ、すぐに経営が軌道に乗ったのではないかと振り返る野沢さん。繁盛店である『じゅん粋』時代は開業1か月目から多忙を極め、気づけば7年の月日が流れたという。
