東北沢『ジビヱ 岸井家』、イタリアンの名手が住宅街にワンオペレストランを開業するまで
銀行に融資を頼むのなら内見前に相談しておきたい
内見直後の、物件を契約する前に話を戻す。内見に来たら4人が先に来ていた。借りたいのなら早いもの勝ち、そんな状況だった。潤沢な資金があれば話は別だが、内見後、銀行の融資を受ける準備をしたのでは借りられるものも借りれないと岸井シェフは説く。
「居抜き物件を借りるのなら、内見前に融資を受けられるかどうか銀行に相談するべきです。私は事業計画書を銀行に提出しました」
書類にはどのような事業を考えているのかを記載した。そのほか、購入予定の厨房備品のリストを作成。それぞれのメーカーやインポーターなどに連絡し、見積もりをもらった。岸井シェフの場合、ワインセラー、真空包装機、スライサー、低温調理器などの見積もりを入手。備品名とそれらの購入に必要な金額を事業計画書と一緒に銀行に提出した。銀行が最低限必要な金額を計算し、融資額を決定する。
「借りたい物件が決まる前に、融資を申請する準備をしておくべきだと思います」
前オーナーに支払う造作譲渡費が発生する可能性が高いことも覚えておきたい。
前オーナーの信用を得ることも居抜き物件を借りるコツ
銀行以外にも提出した書類がある。経歴書、ハンターの資格を持っていてジビエ料理をやりたいと思っていること、想定する客単価、月どれくらいのお客が入れば経営できるのかといったことを書いた書類を前オーナーシェフに提出した。
「内見するだけでは意味がないと思っていました。前オーナーシェフは、この物件にも長年愛用してきた厨房にも思い入れがあるはずです。なぜこの物件を手放すのか、その理由はわかりません。でも、信用できない人には譲渡したくないはずです。信用を得られるかどうかが重要だと考え、前オーナーシェフに書類を渡しました」
結果、ジビエ料理をワンオペでやろうとしている岸井シェフを選んでくれた。ほかのジャンルの料理人も内見した中で、なぜ自分が選んでもらえたと思うか。
「モロッコ料理はある意味尖っていますよね。ジビエ料理と相通じるものがあったのではないかなあと思っています」
