全国で「はしか」の感染者が相次ぐ。飲食店が知っておきたい麻疹感染に関する基礎知識
全国で「はしか」の感染者が相次いで確認されている。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザよりも、はるかに強い感染力を持つと言われているはしかだが、飲食店ができる対応策はあるのだろうか。本稿では、現在までに自治体が発表している感染状況や、はしかに感染した場合の主な症状、予防方法についてまとめた。
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非常に強い感染力。免疫なく感染した場合の発症率はほぼ100%
はしかは、「麻疹(ましん)」と呼ばれるウイルス性の感染症だ。非常に強い感染力を持つことで知られており、1人のはしか感染者によって12〜18人の免疫がない人たちに空気感染するとされている(新型コロナウイルスは2.5人、インフルエンザは1~2人)。また免疫を持っていない人が感染した場合、ほぼ100%発症するという。
はしかの主な症状は発熱、全身の発疹、口腔内にブツブツができるコプリック斑だ。特徴的なのは発熱の仕方で、発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が2〜3日続いたあと、39℃以上の高熱と発疹が出現する。最初は風邪の症状と類似するため、はしかだとは気づきにくいかもしれない。
発症から7〜10日ほどで回復することが多いが、中耳炎や肺炎などの合併症を起こしやすく、感染者の1000人に1人は脳炎が発症すると言われている。先進国であっても、死亡する割合が1000人に1人出てしまう感染症だ。また10万人に1人と低確率ではあるものの、特に児童期には亜急性硬化性全脳炎という中枢神経疾患を発症することもある。
はしかはアジアやアフリカを中心に感染が広がっているが、先月以降、日本各地でも相次いではしかの感染者が確認されている。もし感染の疑いがある場合は、公共交通機関の利用や、直接病院に行くことは避け、医療機関や保健所に電話で相談しよう。
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マスク着用などの対策では不十分。唯一のはしか予防方法はワクチン接種
はしかは接触感染、飛沫感染だけでなく、空気感染もする感染症である。たとえば過去には、同じ列に並んだ、カウンター越しに接客したという程度でも、感染が確認されている。つまり飲食店が新型コロナウイルス感染症対策で行ってきた、ソーシャルディスタンスや非接触、マスク着用という対策では不十分ということになる。
これまでにはしかの罹患歴がない場合、唯一の予防方法はワクチン接種だ。抗体を保つためには2回の接種が推奨されている。ワクチン接種を受けているかは年齢でおおよそ目安がつく。
・1972年9月30日生まれ以前(51歳以上):定期接種なし
・1972年10月1日生まれ以降(23〜51歳):1回接種
・2000年4月2日生まれ以降(23歳以下):2回接種
仮にワクチンの任意接種をする場合、かかる費用は数千円〜1万円台程度。はしかの抗体があるかわからない人は、数千円から抗体検査が受けられる。はしかは、新型コロナウイルス流行前の2019年に世界的に流行し、日本国内での患者数も年間700人を越えていた。2020年以降は行動制限の影響か、しばらく感染が抑えられていたものの、行動制限の解除で再び感染が拡大したと推測される。今後も感染状況の推移を注視していきたい。
参考資料:
厚生労働省「麻しんに関する基礎知識」(PDF資料)
厚生労働省「麻しんについて」
国立感染症研究所「麻疹Q&A Q1:麻疹(ましん、はしか)について」
一般社団法人 日本ワクチン産業協会「2023 予防接種に関するQ&A集」(PDF資料)
厚生労働省「新型コロナウイルスの検査 手法について」(PDF資料)
