東京で、地方で、ベトナムで快進撃。コジマ笑店が実証する「繁盛店を生む奥義」
人ありき、街ありきの出店計画
スタッフを「人として鍛え、育てたい」という姿勢がよく現れているのが「マニュアルはつくらない」という会社方針だろう。
「街には、それぞれの顔があります。仕事場近くの店と、家の近くの店では、お客さんの呑み方だって変わるはず。当然、接客も変えるべきでしょう。浜松町(『座魚場まるこ』)のようなオフィス街では、こちらから行くようなタイミングで接客するし、高円寺にはひとり客が多いので、ずっと優しく気配りするような接客が合っている。何をやりたいかではなくて『その街には何が足りないのか』を自分で考えられるといい」

『米のこじま』という店名は、小嶋さんの父方の祖父が小樽で米屋を営んでいたことにちなむ。店内ではカウンター近くの目立つ場所に精米器を設置するのがポイント。玄米から精米したての白米を用いていることをわかりやすく伝える
そうなると、適材適所でスタッフを配置するのが最適解かと思いきや、意識してスタッフの異動を繰り返すという。理由は2つある。
「まず、店には新陳代謝が必要という経営的な理由です。常連さんに愛され続ける店でも、周囲の環境は移り変わります。そのときに店の代謝が少ないと、空気が吹き溜まって、徐々に雰囲気が暗くなってしまうんですね」
「もう1つは、スタッフがどこでも働けるようになれば、個人として強くなれるから。人間ですから、合う街と合わない街は出てくるでしょう。でも、自分の向き不向きがわかれば、たとえ独立して自分で店を出すときも失敗が少なくなります」

「魚を扱っている店では、FLにおける食材費の比率は35%のラインで考えています。それ以上でも以下でもいけません。経営を圧迫せず、かつ食材の質を落とさないことで、お客さんが『思っていた会計よりも安い』というコスパを感じてもらうことが自分たちの店の絶対条件にあります」(小嶋さん)
自身の修業時代を振り返ると、やはり異動は多かった。
「いろんな街が好きなので、自分はどこの店へ行くのもオッケーでしたね。反対に同じことを繰り返していると飽きてしまう」
