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東京で、地方で、ベトナムで快進撃。コジマ笑店が実証する「繁盛店を生む奥義」

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取材当日のランチメニューより「直送 高知鮮魚の海鮮丼」(1,500円)

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最重要な出店条件は「その街が好きかどうか」

いろんな街が好きという小嶋さんに具体的なエリアを尋ねると「出店した地方都市はすべて大好きな街」という答えが返ってきた。

「例えば、20年前に旅した高知では『鰹のわら焼き』に出合い、独立する店の名物にするほどに惚れ込みました。八戸を初めて訪ねたのは震災直前です。朝市の終わりに寄った横丁で “イサバのカッチャ” と呼ばれるお母さんたちに厨房を貸してもらい、買ったばかりの魚を調理してガッと酒を呑んだのが忘れられない思い出です。那覇にもよく行きます。東京の繁華街へ繰り出すより、飛行機に飛び乗るほうが心理的なハードルが低いくらい(笑)。すべてに共通するのは、酒文化と食文化が根づき、独自の進化をしている街ということです」

自家精米の「おむすび」(2個550円)もテイクアウトで販売

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自分の性格を「ずっと家にいることが大嫌い。とにかく外に出ることが好き」と表現する。そんな小嶋さんが今もっとも力を入れるのが、昨年ベトナム・ホーチミンに共同出店したジンギスカン店だ。プロデュースの手伝いから段々と本腰を入れて関わるようになった。

「若いエネルギーにあふれるホーチミンも好きな街です。もともとうちの店で5年働いていたベトナム人スタッフが店長を務めています。ベトナムではヤギを食べるし、焼肉文化もありますが、ジンギスカンはありません。それまで街になかったものを提供することで、どんなことを起こせるか。今の客層は現地駐在の日本人が多いですが、もっと街の人に浸透させていきたい」

日本の酒文化と合わせて広めることで、ベトナムに日本の文化を紹介できると手応えを感じている。いい物件に巡り会えたら、立地によっては居酒屋業態にも挑戦したいと意気込む。

『米のこじま』夜営業のメニュー。組み合わせ自由の定食セットなどで幅広いニーズに応じる

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人件費や食材費にリソースを回すには、固定費の圧縮が王道。「坪単価3万以内」は絶対条件

多方面での活躍を続ける小嶋さんから、最後に「繁盛店を続ける奥義」を聞き出した。

「経営者は会社トータルの状態を、店長は売上目標や前月の実績、あるいは前任者の実績など、さまざまな数字を見なければいけません。でも、最も重視すべきは『家賃コスト』に尽きます。家賃比率を10%に設定する店が多いでしょうが、自分たちの店(ただし坪単価3万円以内の店舗)の売上目標は、家賃比率が5%になる数字です」

アルコールメニューも多種多彩。土日は通し営業で昼呑みが人気。スタンディングに客が連なるほどの盛況を見せている

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【注目記事】21坪で月商1,000万円を誇る『もつ焼き ふじ屋』。最大の強みは「FLコスト」を抑えた利益構造

「坪単価3万円以内は、自分がお店をやるときの絶対条件。だから、どうしてもB級やC級の立地条件になる。でも、その街、その時間帯にないものを考え抜けば、A級の店舗として光れます。するとほかの店も同じ場所に集まってきて、街全体に明かりが灯ってくるんです。また、地方だと余裕を持って家賃比率5%という数字をクリアできます。八戸やホーチミンは格安の一軒家であり、そうした店を持つことで会社全体のバランスを取ることもできるでしょう。人件費や食材費に経営資源を回すには、ありきたりでも固定費の圧縮が王道。そのうえで売上の数字を追うことが大切です」

変わり続けることの大切さをエネルギッシュに説く小嶋さん。発展するベトナムの空気にも刺激され、その経営哲学にますます磨きがかかっている。自らを “居酒屋野郎” と称してはばからない生き方は、遠い地にも大きな変化をもたらすのだろう。

「米屋が手がける酒場」というイメージを街ゆく人々にもアピール

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『米のこじま』
住所/東京都杉並区高円寺南3-70-2 高円寺マシタ
電話番号/03-3336-7771
営業時間/平日11:00〜14:00/17:00〜23:00(L.O. 22:00)、土日11:00〜23:00(L.O. 22:00)
定休日/年末年始
坪数・席数/12坪23席(テーブル1卓)+スタンディング
https://www.instagram.com/kome_no_kojima/

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神吉弘邦

ライター: 神吉弘邦

経済誌『Forbes JAPAN』、デザイン誌『AXIS』、建築誌『商店建築』、カルチャー誌『BRUTUS』などに寄稿するフリーランス編集者。コロナ禍で飲食店のありがたさに気づき、料理の奥深さにも開眼。メディア取材や企業コンサルティングのかたわら、現在「あて巻き」発祥の寿司居酒屋でも修行中。実家は仕出し屋。