神泉の隠れ家レストラン『Hone』。「唯一無二」と「再現性」を両立する無双の佇まい
神泉駅から徒歩1分の裏路地。狭い間口に踏み入ると、おしゃれな上質空間が広がる。その店の名は『Hone(ホーン)』。築古物件を改装した同店は、1階は立ち飲みバー、2階はレストランというしつらえだ。
運営元はデザイン事業を主軸としてきた株式会社and Supply。池尻大橋の『LOBBY(ロビー)』、代々木公園の『nephew(ネフュー)』に続く3店舗目の出店で、初のレストラン業態での出店である。デザイン会社ならではのセンスに加え、これまでの飲食店経営の実績とノウハウをもとにオープンした『Hone』は、どのように生まれ、育まれてきたのか。店舗開発や経営方針を、CEO井澤卓氏に聞いた。
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飲食事業に当てはめた『再現性と非再現性』
and Supplyが展開する飲食店には、デジタルマーケティングやクリエイティブデザインに精通した、井澤氏らしい経営理論が反映されている。
「事業展開においては、『再現性と非再現性』という相反する要素を大切にしています。店づくりというハード面では、クリエイティブな『非再現性』を意識。同時に、店舗運営というソフト面ではビジネスの原理原則に則って、成功の方程式となるような『再現性』を追求してきました」(井澤氏、以下同)
繁盛店の共通点である「他に類を見ない個性的な店」を作りながら、堅実な独自のノウハウを蓄積する。安定した収益が得られる根拠だ。
あえてコンセプトを決めない、非効率な店舗開発を楽しむ
通常、飲食店立ち上げの際には、まず店のコンセプトを決め、そのコンセプトに従ってデザイン会社や施工会社と詳細をすり合わせていく。しかし同店の立ち上げは、コンセプトを定めないまま走り出したという。井澤氏のいう「非再現性の高い店づくり」は、こんなふうにして始まる。
「クライアントの店舗をデザインするときにはコンセプトは大切です。しかし今回は自社事業。コンセプトに従うのではなく、その瞬間で自分たちが良いと思うものを選択し組み合わせる余白が欲しかったんです。時間もコストもかかる効率の悪いやり方ですが、この方が自分たちらしい、いい店をつくれると思うし、断然楽しいんですよね」
同店の物件は築古戸建てで、増築改築を繰り返した特殊な物件である。図面通りに改装を行うのではなく、解体してみて実際の柱の位置などを確認しつつ、その都度アイデアを出し合いながら工事を進めた。内装のディテール全てにこだわり、至る所にストーリーが散りばめられているが、唯一無二の空間に仕上げるには、なにかコツがあるのだろうか?
「たとえば普通は使わない建材を使ったり、風変わりな素材を取り入れたり。デザインではアーチの曲線とタイルの直線を組み合わせたり、業界で流行っているものはあえて避けたり。こうすることで、なにかを真似たとか、どこの文化の影響を受けた、というような起源が分からない空間に仕上がります」
また店舗デザインのみならず、料理も独自性が高い。たとえば「フライドポテト」といえば一般的には細長い形状で塩味を想像するだろうが、同店のそれは丸みのあるコロコロした形状で、ソースやハーブを絡めたオリジナリティのある特別な一品に仕上がっており、それも定期的にアップデートされるという。
「少しの意外性を意識していて、社内ではそれを『既知と未知のバランス』と呼んでいます。料理ならメニュー名から想起される味わいや香り、ビジュアルに“ひとひねり”程度のアレンジを加えるのがベスト。食の専門家ではない一般のお客様の目線を忘れず、自己満足にならないように気をつけています」
