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三軒茶屋で坪月商45万円『アンビリカル』。多様性を受け入れる“ストリートフレンチ”魂

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広尾の魚介フレンチ『ビストロ シロ』や代々木上原『Gris』などで研鑽を積んだ小野氏

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突き詰めたのは、独自性と間口の広さを両立させるバランス

共に岩手県出身という二人は大学卒業後、それぞれ大手企業へと就職。しかし「よりダイレクトに人に幸せを届けられる仕事がしたい」との志で再び軌を一にし、飲食の道へ飛び込んだ。すでに20代後半。スロースタートのハンデを取り返すべく、髙橋氏がワインを、小野氏が料理をと明確に役割を分担することで独立まで最短の道筋を立て、ひたむきに突き進んできたという。

約5年の修業を経たのち、拠点に選んだのが三軒茶屋だ。「ダイレクトに」という初心を胸に、飲食店街と日常の暮らしが隣り合うこの街で、「多種多様なお客に寄り添う姿勢」を貫く。

「三茶には、近所に住む方、学生、遠方から飲みに来られる方までさまざまな属性の方がいます。コスパや味にシビアなお客様も多い。ただ、僕ら自身はけっして名の知れた料理人ではないので、店の前を偶然通った地元の方やお酒・食事が好きな方の目に止まること、そして入りやすい店にすることが必要だと考えていました。『すべての人が立ち寄りやすく、さらに満足して帰っていただくためにも、それぞれのお客様の期待に応えたい』。8年間、とにかくその一心で続けてきましたね」(小野氏)

店内は落ち着きのあるカジュアルな雰囲気

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二人は、自身のスタイルを“ストリートフレンチ”と表現する。着想したのは、1990〜2000年代に彼ら自身が青春として親しんできた「ミクスチャー」のカルチャーだ。「自分たちの好きなものを自由に取り入れながら、多様性を受け入れる」。そんな考えがベースにあるという。「岩手県の食材×フレンチ×ナチュラルワイン」をかけ合わせ、料理自体にもクラシカルな要素と遊び心をミックス。そしてどんな属性・嗜好・シーンで訪れるお客も受け入れるというスタンスを、食事の場で表現したいと話す。

お客は老若男女問わず、もちろんワイン通かどうかも関係ない。もっといえば、日常使いから2軒目使い、特別な日の演出まで、三茶ならではのさまざまなニーズに応えるために、メニュー構成、料理の仕立て、価格、サービスなどに少しずつ変化を加えながらブラッシュアップしてきたと振り返る。

「『多種多様なお客をすべて受け入れる』。それが僕らのストリートスタイルです」と、髙橋氏。その中で、いかに自分たちの色やメッセージを織り交ぜるかというバランスを探り続けてきたと語った。

「お客様も僕らも『みんなが自分らしくいられる最適解』をずっと追い続けています」(髙橋氏)

「ネームバリューがない以上、街の特色に店を合わせることは必然だった」と話す二人

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。