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池尻大橋『ザ・銀皿』が織りなす「感性」の法則。目指したのは「常識破りのネクラな店」

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「店はお客さまのためのもので、僕はあくまで黒子ですから」と語る、店主の小田島利成氏。黒い服と顔出しNGがポリシー

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サブカル臭漂う店主が営む、池尻大橋の隠れ家ダイニングが話題を集めている。店名は『ザ・銀皿』。その名の通り、料理はすべて銀皿、つまりステンレス製のシルバー皿で提供される。無機質な店内に味わい深さをプラスするのは、山下達郎の楽曲と昭和コミック。この空間はまるで、いつの間にか大人になってしまった“俺たちの秘密基地”だ。

開業から1年でインスタグラムや口コミで常連客を掴み、先月行われた1周年イベントにはおよそ100名が駆けつけた。客を魅了する世界観はどのように生み出されたのか。店をひとりで切り盛りする、店主の小田島利成氏に店づくりの発想を聞いた。

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「赤いウインナー」(500円)。ケチャップにカレー粉をまぶしたのは、ドイツで食べたソーセージから着想を得た。店主はアメリカ、ヨーロッパ、中東など、海外経験が豊富

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「銀皿」に宿る、画一化された美しさを主役に

同店のインスタグラム公式アカウントには、銀皿に盛り付けた料理を真上から押さえた写真が並ぶ。料理のジャンルや特定の素材ではなく、提供する食器でカテゴライズする切り口が新しい。

「銀皿って、なんかいいんですよね。昭和をエモいと言う若者世代から、昭和の生き字引世代まで、年齢を問わずみんな『懐かしい』って口を揃えます。日本人のDNAに刻まれているのか、ってくらいに」(小田島氏、以下同)

銀皿というと、最近の昭和レトロブームも相まって喫茶店のナポリタンやオムライスを彷彿させるが、同店のメニューはジャンルレス。むしろ、映えを狙ったものや奇をてらったものはない。

「銀皿ってシンプルだからこそ、どんな料理を乗せても様になるんです。フランス料理の大きなプレートや和食の八寸で提供する料理は盛り付けに創作性がありますが、銀皿はその真逆。画一化された美しさがあると思っています」

メニューはどれも馴染みのある料理ばかりだが、一口食べれば小田島氏が長年、飲食業界で研鑽を積んできたことがわかる。例えば、「ポテトサラダ」なら動画映えする半熟卵を乗せるのではなく、燻製したジャガイモの香りをポイントにする。「赤いウインナー」に添えられたマヨネーズ&ケチャップには、カレー粉をひと振りしているのがにくい。

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。