坪月商60万円の江戸川橋『フジコミュニケーション』。目指したのは「地元客も通える店」
白山『オルソー』はワンタン×クラフトビールで行列店に
そんな近藤氏のもとには、パンデミックで働き口を失ってしまったホテル時代の部下たちが「手伝わせてください」と集まってきていた。『フジコミュニケーション』も繁盛店となり、「この調子で店舗を増やせばコロナ禍でも成功できる」と確信したこと、さらに「働きたいと集まってきた人たちの気持ちに応えたい」と近藤氏は考え、2021年3月に姉妹店の『オルソー(鶯嵝荘)』を開業した。
店舗探しでは『フジコミュニケーション』から2〜3キロメートル圏内を意識したといい、都営三田線の白山駅近くの物件を選んだ。元々イタリアンだったという古民家を、自分たちで塗装。業者に依頼した台南風の鉄格子を窓に施し、「鶯嵝荘」と店名を繁体字で記したレトロな看板を掲げ、台湾好きの“台湾ロス”を埋められるような外観へと作り替えた。
『オルソー』でコンセプトに据えたのは、台湾ワンタンとクラフトビールだ。
「台湾では水餃子よりもワンタンのほうがポピュラーなんですよね。実は『饂飩』と『雲呑』はどちらもワンタンと読みますが、具の多さが違うなど現地ではワンタンの種類が7種類ほどあるといわれています。東京でワンタンをメインにしたお店もなかったので、いろいろなワンタンを食べられるお店をいつかやりたいと思っていたんですよ」と、近藤氏はそのコンセプトに至った経緯を明かす。
ワンタンに加えて新たに取り入れたのが、クラフトビールだ。ワンタンをメインにしたお店ということで、ワンタンの皮を入れたクラフトビールを開発。既存客は女性が多かったということもあり、ホップが利いていてトロピカルなジューシーさがあり、すっきりとした後味のビールを作り上げ、客の心をつかんだ。
料理は1,000円以下。地元の人が当日予約できるお店にすることが大切
出店した白山は、千石エリアまで含めるとかなり住民の数が多く、近くには大学があるものの、競合店が少なかった。気軽にワンタンとクラフトビールを楽しめるお店が地元民にも喜ばれ、オープン初月の2021年3月から行列ができるほど集客に成功。2フロアで合計70席が連日満席となる繁盛店となった。
繁華街ではなく、地元民を相手にした商売で大事にしていることは何かと尋ねると「地元の方が当日予約できる店にすること」と近藤氏は熱を込める。
「お店の前にメニューも出ていないし、外観からしても何のお店だかわかりづらい上に、電話して予約ができなかったら地元の方は不満に思いますよね。それが口コミで広がってしまう恐れもある。そのため予約はある一定程度までしか受けないようにして、当日予約したい方のために空けるように調整しています。これは『フジコミュニケーション』時代に学んだことです」
『オルソー 東京ミッドタウン八重洲』、大塚に『マンション台北』も出店
三井不動産の声掛けを受け、2023年4月には東京駅前の商業施設に『オルソー 東京ミッドタウン八重洲』をオープン。『ヤエスパブリック』というフードコート内への出店で、店舗は3.5坪という屋台形式だったため、その中で調理できるメニューに絞り込んだ。お客もパブリックスペースで立ち飲みのような形で楽しむ人が多いため、小皿にしてたくさん注文してもらえるようカジュアルなお店を目指した。
この際に活用したのが白山『オルソー』の調理場だ。いわゆるセントラルキッチンとして使い、調理したものを『オルソー 東京ミッドタウン八重洲』へ毎日運んでいる。
さらに2023年12月には大塚に台湾家庭料理の『マンション台北』を開業。こちらも白山や江戸川橋から2〜3キロメートル圏内の物件ということで契約したという。
「10坪20席のコンパクトな店舗なので、ワンオペで営業できるお店かつ、周辺の雰囲気にも合うお店にしようと考えました。台湾の豚の角煮をのせたコンローファンであれば、事前に調理して煮込んでおいたものをおでん鍋に入れておき、オーダーが入ったらお皿に盛るだけで提供できます。ワンタンと水餃子も白山で作ったものを持ってきて、お店では茹でるだけで済みます」
その結果、10坪で月商150〜200万円を達成。店長にも十分な給料を払えるだけ、利益を生み出している。
