創業6年で離職者はわずか2名。超人気バル『カルボ』の「人が辞めない店づくり」
経営者に求められる環境整備
由利氏の施策の成果は創業から6年で5店舗、退職者が2人という低い離職率が示している。こうした成功は、由利氏自身に高い技術力があったことや、スペイン料理が日本における一種のブランドであることなどの要因があったことは想像に難くない。その施策は決して突飛なものではなく、極めて基本的で、かつ、合理性のあるものと言っていい。
どの事業であっても従業員が高い技術を身につけ、それを会社に還元していくことで企業全体が成長していくため、人材の定着は悪いことではない。従業員が定着すれば、キャリアや技術に見合った報酬が必要になる。給与を上げるためには会社の実績を上げなければならない。席数が決まっている中、業績を上げ続けるためには①客数増、②客単価上昇、③コストカット、が考えられる。
キャパシティに上限がある状況では①には自ずと限界がある。たいていの場合、いたずらに店外の行列を長くするか、回転率を上げるために客を急かせるなど、ネガティブな影響の方が大きくなる。②は高い商品を勧める、価格改定が考えられるが、それらは客足を遠のかせる要因となり得る。③は原材料費などのコストをカットして浮いた分を人件費に回すとしても、それを継続的に実現できるとは考えられない。
いかに人気店とはいえ、1つの箱だけで事業を行なっている場合には「人を育て、それに見合った報酬増を実現して定着させる」のが簡単でない。飲食事業で人が定着しにくいのは、業界自体が持つ構造的な問題に起因すると言っても過言ではない。そして、多くの経営者が商売繁盛のためのどこかの過程をクリアできずにダウンワードスパイラルに陥っていく。
人を定着させるには、この業界特有の成長を阻害する体質を拒否することから始めなければならない。「自身が成長を続けて会社に大きな収益をもたらしても取り分は増えなくていい」と考える従業員が面接にやってくることを期待して店舗を続けるのは、「お金が降ってこないかな」と考えて毎日空を眺める行為に似ている。
人を定着させるには人の成長とともに企業も成長し、その中で人件費上昇分を捻り出すしかない。そのために経営者がやるべきことは「従業員が努力次第で自分で給料を上げられる環境を作り出すこと」と言っていい。由利氏はそれを確実にやってきたからこそ、同社の今の状況があると思われる。
生きがいを見出せる職場環境
由利氏の人材育成について聞くと、その根本は本人のやる気をいかに導き出すか、この会社で働くことに生きがいを見出せるように環境を整えるかという点に帰着する。
「給料100万円あげると言っても辞める人はやめますし、辞めない人もいます。飲食は職場に人が少ない分、ストレスをダイレクトに感じてしまうものです。ですから、給料を上げたら全て解決というものではありません。人と人との関係をしっかりと整えることが大事です。料理をやりたいのにホールをやらせるということはありますが、それでもこちらがしっかりと話を聞いてフォローすれば、人は辞めません。独立したいとも思わないでしょう。僕はそういう会社づくりをしています。辞めさせないではなく、辞めたくない会社づくりです」
従業員15人の規模だからこそ可能な社員とのウエットな関係といえるが、50人、100人と増えていった時にも根本を変えなければ、大きな変化はないのかもしれない。1人1人の従業員を知り、尊重することをベースとする人材育成術は多くの飲食企業が学ぶべきことと思える。

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何故こんな初歩的な事分からないオーナーや店長
FCのマネージャー 特に地方のチエーン店酷いですよ
古いだけのパートリーダーの新人いびり。辞めさせ自分の地位守りたいのかな?それを見て見ないふりの店舗責任者。私は大学1年生は卒業迄見守って来ました。多くのスタッフが飲食業に携わる教育もしました。古いだけの方 新人さんが育てば皆んなが
いい仕事出来るしお店運営改善しますよ