坪月商80万円を売る『タイ・イサーン料理ヤムヤム』。妥協なき本場の味再現でバンコク逆上陸
それなら僕が本当のタイ料理を…
そもそも川端氏がタイ料理を扱うことになったきっかけが変わっている。「僕は月曜から金曜までオール外食です。ですから、ひと口食べたら、何が入っているか想像がつきます。ところがタイ料理を食べた時に何が入っているのか全くわかりませんでした。『これ何が入ってるの?』『どういう味付けしてるの?』みたいな、自分の想像を超えてきました。タイ料理は甘い、酸っぱい、辛い、苦いだけでなく甘辛とか、ニガ酸っぱみたいな、そんな複雑な味がします。それがとても衝撃的でした」とタイ料理との邂逅の瞬間を話す。
徐々にタイ料理を研究し、本場でも食べているうちに日本のタイ料理に不満を感じるようになった。「日本の店に行くと日本人に合わせたタイ料理ですとか、インド料理店でインド人が作っているタイ料理ですとか、そういうのを食べたお客さんが『おいしいよね』と言っているのを聞いていると、とても複雑な気分になりました。『違うよ、本場の味はこうじゃないよ』と言いたくなり、それなら、僕が本当のタイ料理の店をやってやろうと思ったわけです」と決意し、2017年の門前仲町での1号店オープンとなった。
本場の味の再現にこだわり、シェフをタイ人に固定。どんなに実績のあるシェフでも、実際に川端氏がテイスティングをして、それに合格しないと採用はしない。川端氏の舌に合わなくても、要望を出して、それに合わせることができたら合格する場合もある。
本場の味と雰囲気を正確に再現することを証明してくれるのが、前出のThai SELECT。その結果、「お客さまからの見る目も変わるし、お店として箔も付きます。タイ料理好きの方やこだわりのある方が自然と集まってくれます。何より大きいのは従業員が高い意識を持って日々の仕事に取り組んでくれることです。店内は自然とタイ語が飛び交い、タイの雰囲気が醸成されます」という効果が表れた。本物の味にこだわり続けた結果が1号店開店から7年で海外1店舗を含む5店舗へと成長したのである。
国内で2店舗しかない状況でバンコクに店を出したことについては「エカマイ店は日本の店の料理をそのまま出しています。同じ味です。正直なところ、オープンする時に『答え合わせ』と思っていました。『本当にタイ人にウケるのかな』という答え合わせです。実際に受け入れられたことで『僕たちがやっていることは正しかったんだな』と確信を持てました」と振り返る。
ただし、日本企業ならではの一工夫を加えた。「冷えたおしぼり」「チムチュムはオーダーすれば店員が作る」「トイレにウォシュレットをつける」という、「現地のタイ料理店ではあり得ない」(川端氏)サービスを付加。タイの本場の味に日本流のおもてなしという無敵の組み合わせで臨んだところ、地元での評判が評判を呼び、中国のSNSで紹介されて人気が高まり、最近は中国人客が増えて、今では4割程度を占めるようになったという。
