『大衆酒場 ろくばん』に学ぶ“下町出店”の極意。門前仲町で3店をドミナント展開!
居酒屋3店は大通りで人流が分断された閑静なエリアに立地
『ろくばん』など居酒屋3店の業態開発の前提条件として挙げられるのが、その立地特性だ。
門前仲町は東西に永代通り、南北に清澄通りが伸びており、通りに分断されたエリアによって地域特性が大きく異なる。同社の居酒屋3店が位置しているのは清澄通りの西側。冒頭で述べた「富岡八幡宮」と「成田山 深川不動堂」は清澄通りの東側にあり、繁華街もその周辺に広がっている。清澄通りで人流が分断されるため、同社の居酒屋3店はいずれも人通りの少ない閑静なエリアに店を構えているのだ。

『六傳』と『ろくばん』の内外装を手がけたのはデザイン会社の山翠舎。『六傳』はカウンター、『ろくばん』は長テーブルを客席のメインにしているが、いずれも古材をふんだんに用いたデザインを施している(画像提供:杉六)
また、『六傳』は永代通りの北側、『ろくばん』の南側に位置しており、そこでも地域特性が変化する。
「『六傳』と『ろくばん』の両店は既存店のお客さまにご紹介いただいた物件で、『六傳』があるのは住宅街の一角。当然、日没後の店前歩行者数も限られますが、可処分所得の高い住民が近辺に多い。そこで、そうした地元住民をメインターゲットにした、割烹をカジュアルダウンした『六傳』のコンセプトが固まりました」(上杉氏)
17年以上にわたって一度も利用したことがない路地の物件
一方、『ろくばん』は門前仲町駅の4番出口から徒歩2分というアクセス至便な路面店。ただ、「門前仲町に店を構えてから17年が過ぎましたが、『ろくばん』の物件があった路地は一度も通ったことがなかった」と上杉氏が言うように、店前の道路は周辺の地元民でなければ利用する機会が少ない道だ。
「『六傳』のオープンから時間が経っておらず、その投資回収も済んでいませんでしたから、正直なところ出店は難しかった。でも、これだけ駅近の物件に出合える機会はめったにありませんし、閑静な路地の雰囲気も気に入ったため、思い切って勝負することにしました」
清澄通りの南側にも住宅街が広がっているが、こちらは古くから暮らしている住民が多いエリア。そうした地元住民に照準を合わせ、普段使いできる大衆酒場を志向して『ろくばん』は開発された。
