『大衆酒場 ろくばん』に学ぶ“下町出店”の極意。門前仲町で3店をドミナント展開!
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大衆酒場の定番メニューを『ろくばん』流にグレードアップ
フードメニューは「冷菜」「酒場の定番」「鮮魚」「焼」など日替りの黒板メニューを含めて9カテゴリー計60品をラインアップ。「ろくばんの肉豆腐」(660円)や「酒場の厚切りハムカツ」(605円)、「大人のポテトサラダ 半熟玉子のせ」(583円)など大衆酒場の定番をメニューの下地にしているが、「すべての商品をろくばん流にグレードアップしました」と上杉氏は説明する。
「下町の濃厚コク旨 味噌煮込み」(605円)には煮込みによく用いられるホルモンなどは使用しておらず、豚肉、鶏肉のさまざまな部位を混ぜ合わせ、コクがありながらも口当たりが重たくならないように仕上げた。タコぶつも単品原価率50%以上を投じた「生本鮪と蛸(たこ)ぶつ」〈990円〉にアレンジ。
また、「お通し」(300円)にも工夫を凝らしている。「お通しでお客さまの期待感を高めたい」(上杉氏)という考えから、取材時には「冷製茶碗蒸し」を提供。その他にも「長芋そうめん」や「酢の物の盛合せ」など大衆酒場のお通しらしからぬ手の込んだ料理を用意している。
「いかの塩辛」(418円)、「エイヒレの炙り」(660円)など一部商品に既製品を用いているものの、「商品の8割はスクラッチにして品質アップを図っています」と上杉氏は語る。
「清澄通りの東側には老舗の『魚三酒場』さんを筆頭に、大衆酒場の優良店が揃っています。そうしたライバルに打ち勝つには、クオリティを徹底して磨きあげる必要がある。そう考え、メニューの6割に主役級のいち押し商品を揃えました」
瓶割材(そと)の品揃えを拡充してドリンクメニューの自由度を高めた
ドリンクメニューはサイズ違いを除いて12カテゴリー計70種を用意しているが、大衆酒場らしさを強調するために策を凝らしたのがサワーの品揃えだ。
売れ筋の「自家製 塩レモンサワー」(583円)など「レモンサワー」6種、「ミツカンぽん酢サワー」(473円)や「韃靼そば茶ハイ」(473円)など「サワー」9種をラインアップ。さらに、「自由度の高さが大衆酒場の魅力」(上杉氏)と考え、「コダマ レモンサワー」(275円)や「ハイサワー 無糖クールレモン」(275円)など「瓶割材(そと)」12種を揃えている。

写真右から、「自家製 塩レモンサワー」(583円)、「ミツカンぽん酢サワー」(473円)、瓶割材の「コダマ 青リンゴサワー」(275円)、「コダマ アセロラサワー」(275円)、「ホッピー 白」(352円)、「金宮焼酎(なか) やかん(700ml)(2200円)
成熟化する門前仲町の居酒屋マーケットに適応
エリアごとの特性を熟知し、それを『六傳』と『ろくばん』の業態開発に活かしている上杉氏。彼が行う業態開発でもうひとつ特筆すべき点が、時代の変化に対する適正化だ。
同社はコロナ禍前にも店数を3店まで伸ばしていたが、鶏料理と焼酎をメニューの柱にした『杉六』などそれまでは専門性を売りにした居酒屋を開発してきた。コロナ禍の影響によって2店をクローズ。外食マーケットの回復を見ながら、『六傳』をオープンしたわけだが、「門前仲町の居酒屋マーケットもこの10年で大きく変化した」と上杉氏は言う。
「『杉六』で焼酎を売りにしたのは、門前仲町に焼酎専門店が皆無だったため。しかし、このエリアの居酒屋マーケットが成熟化し、業態の細分化が進みました。さらなる専門性を売りにしようとすると、客層や利用動機が絞られすぎてしまうため、割烹料理店のカジュアルダウン化、大衆酒場のグレードアップ化によって業態の間口を狭めずに差別化を図ろうと考えました」
一方で「居酒屋マーケットの成熟化は歓迎すべき動き。僕が口にするのもおこがましいかもしれませんが、居酒屋1店1店のレベルが以前よりも格段に上がってきており、僕らも競合店と切磋琢磨することで門前仲町を盛り上げていきたい」とその思いを力強く語った。
『大衆酒場 ろくばん』
住所/東京都江東区門前仲町1-2-3 鶴田ビル1F
電話番号/03-6240-3664
営業時間/17:00~23:00(土曜は16:00~22:00)
定休日/日曜
坪数・席数/12坪・34席
https://www.instagram.com/rokuban_monnaka/
