「ゴ・エ・ミヨ 2025」今年のシェフ賞に『青空』高橋氏。『アポテオーズ』『温石』も掲載
「トランスミッション賞」は、『祇園 さゝ木』の佐々木浩氏
培ってきた知識と技術を、時に国を超え、世代を超えてトランスミッションする(=伝える)ことに多大な貢献が認められた料理人に贈られる「トランスミッション賞」は、京都『祇園 さゝ木』(日本料理)の佐々木浩氏が受賞した。
佐々木氏は、料理旅館などで修業後、36歳で独立。「佐々木劇場」とも称されるスタイルで日本料理界に新風を巻き起こし、数多くの料理人を輩出している。
「若い衆や卒業生、そして今も頑張ってくれている料理人、携わっていただいている器屋さんや野菜屋さん、そして魚屋さんなど、皆さんの支えでこのような賞をいただいていると今しみじみ思っている」と述べた。
「ベストパティシエ賞」は、『ル・ジャルダン』工藤隆浩氏
「ベストパティシエ賞」は、デザートの独創性と個性を特に際立たせ、かつコース料理の締めくくりにふさわしいレストランデザートを提供しているパティシエに贈られる。受賞した工藤氏は、パレスホテル東京の『エステール』でシェフの堀内亮氏と出会い、堀内氏が福井市の『ル・ジャルダン』に移る際にともに移った。福井県の食材を生かした華やかなデザートを提供している。
工藤氏は、「堀内をはじめ、普段から苦楽を共にしているスタッフ、応援してくださるお客さま、関係者の皆さまに感謝している。これからの飲食業界に少しでも貢献できるよう頑張りたい」と語った。
「ベストソムリエ賞」は、さまざまな店舗で監修を行う伊藤寿彦氏
「ベストソムリエ賞」は、ワインの知識やワインリストの構成のみならず、卓越した接客術を持ち、常にお客さま重視の姿勢でサービスを行うソムリエに贈られる。受賞した伊藤氏は、自身のビストロ・ワインバーだけでなく、業態の異なる店舗でワインやサービスを監修する新しいソムリエ像を提示している。
伊藤氏は、「この6年間、若いソムリエの方々から、どのように仕事をしているのか、見せてほしいという要望をたくさんいただいたが、なかなかお応えすることができなかった。今回の受賞で、少しばかりアドバイスができるような機会も生まれたのかなと感謝している」と述べた。
「ベストサービス・ホスピタリティ賞」は『茶禅華』サービスチームが受賞
「ベストサービス・ホスピタリティ賞」は、レストランや料理店において、その店の世界観を的確に伝える最終的な接点として、お客さまに寛ぎと深い感動の記憶を残すサービスを展開されている人に贈られる賞。ゲストとともに楽しい時間を演出する「主客一体」のサービスが評価され、東京『茶禅華』(中国料理)のサービスチームが受賞した。
『茶禅華』のシェフソムリエである上野和寛氏は、「チームとして賞をいただけたということが何よりも嬉しい。そして素晴らしいお客さまに支えられてこの賞をいただけたことに感謝している」と述べた。
「トラディション賞」は、輪島塗塗師の赤木明登氏
土地が育んできた伝統文化を守り、時に挑戦を試み、次世代へつなぐ知識と技をたゆまぬ努力で磨き続ける職人または料理人に贈られる「トラディション賞」は、輪島塗の塗師、赤木明登氏が受賞。赤木氏は1994年に塗師として独立し、現代の暮らしに溶け込む漆器作りで高い評価を得ている。2023年には北崎裕氏とともに『茶寮 杣径』を開業。赤木氏は受賞にあたって、次のように述べた。
「『茶寮 杣径』は2023年7月にオープンした。その後の2024年1月1日、大きな地震によって建物も甚大な被害を受け、営業ができなくなったが、昨年の3月、2024年版の『ゴ・エ・ミヨ』に掲載され、力と希望をいただいた。建物はまだ復元の工事が始まらない状態で、9月からは仮店舗をつくり営業している。我々の仕事をどこかから見てくださっていて、こういう評価をいただけたということがとても心強い」
「イノベーション賞」は、『MAZ』のサンティアゴ・フェルナンデス氏
「イノベーション賞」は、自身のキャリア、料理哲学、コンセプトなどにおいて挑戦することを選び、 新たな切り口で取り組む料理人・職人・生産者に贈られる。受賞した東京『MAZ』(イノベーティブ)のサンティアゴ・フェルナンデス氏はベネズエラ出身。ペルーのヴィルヒリオ・マルティネスシェフが率いる『セントラル』でクリエイティブ・チーフを務める。その後、『MAZ』のシェフとなり、日本の食材を活かしながら「高度差」で表現する『セントラル』のコンセプトを展開している。
フェルナンデス氏は、「イノベーションというのは、文化の蓄積から生まれるものだと考えている。私が、日本で今経験していること、そのすべてが私のクリエイティビティーの源泉となっている」と述べた。
「テロワール賞」は、石黒農場の石黒幸一郎氏と『エレゾ エスプリ』の佐々木章太氏
土地の風土や食材、育まれてきた文化を尊重しつつ、食材または料理を通じて独自の挑戦を試みている生産者または料理人に贈られる「テロワール賞」は、石黒農場の石黒幸一郎氏と『エレゾ エスプリ』の佐々木章太氏が受賞。
石黒氏は、日本で唯一の「ほろほろ鳥」専用農場を展開。鶏糞を肥料として、ほろほろ鳥の飼料となる米も栽培しており、日本独自の方法でほろほろ鳥飼育に取り組んでいる。受賞にあたって、「ここ数年、コロナがあったり、父が亡くなったり、鳥インフルエンザで突然全羽殺処分になったりということがあり、ようやく昨年事業を再開した。本当に潰れる間際だったときに、多くのシェフ・料理人の方から再開を待っているから頑張れ、と応援していただいた。私は、日本一幸せな生産者だと思っている」と述べた。
佐々木氏は、2005年に北海道帯広市で最高品質のジビエを卸販売する『ELEZO』を創業。ジビエや食肉において、生産狩猟からレストランまでの自社一貫型サプライチェーンを築いた。2022年には、オーベルジュ『エレゾ エスプリ』を開業し、「命と真剣に向き合う」料理で評価されている。
「自然や生産現場に入っていくと、魚屋、肉屋の前に漁師やハンター、生産者がいる。食をつくる起点に立つ人たちは命がけでレストランに食材を届けて、食を求めて足を運んでくださるお客さまに、良いものを届けよう、つくろうと頑張ってくれている。もっと食の起点への感謝を料理から、お客さまから広げていくべきだと思い、20年間自らの人生を費やして、それが今日、報われたような気がして嬉しく思っている」と語った。
「ゴ・エ・ミヨ 2025」では、「ゴ・エ・ミヨ」の精神の根幹ともいえる「新しい才能の発見」や「その土地ごとの食文化“テロワール”」を中心とし、全国版として47都道府県、563軒の店舗を紹介。また10の賞、14組の受賞者インタビューも掲載している。
