28歳未満は予約不可。オトナ酒場『赤坂 港かっぽれ』が敷く独自ルールの効果とは?
満足度を上げるのが最優先、FLコストは削らない
現在、シェフ・松永氏の指揮のもと、オープンキッチンでは8人の料理人が忙しく立ち回る。大箱の物理的な影響は当然、「好きなものを好きなだけ」が旗印のため、一つのメニューを小ポーションに分け、銘々の小皿に盛り付けることで作業の手数が増える。それがホールを含め、基本的に1日14、15人のスタッフを確保する理由だ。
たとえば、メニューの「デミ煮込みハンバーグ」なら、一人分約50gのハンバーグの上に、チーズとウズラの卵の目玉焼きをトッピング。6名個室で同じ注文が入れば、一気に6人分を作り、別々に盛る。松永氏はスタッフに対して、「1秒でも早い盛り付けと配膳」「皿を必ず温める(冷菜の皿は冷やす)」ことを徹底させている。それでも離れた個室まで運べば、冷めてしまう可能性も。だから、大箱店舗では人海戦術が必須なのだ。
「飲食店として当たり前のことが、キャパが大きいからこそ、すごく重要だという気づきが増えました。時間帯によってはスタッフがダブつくこともありますけど、ピーク時は、それだけの人数をそろえておいて良かったと思います。お客さんに満足してもらうことを常に考えると、人件費を削減しようと思わないですね」
料理の材料費に対する考え方も同じだ。粗利を出そうと安価な食材を買うのではなく、お客を満足させることが第一義。客単価8,500~10,000円の1号店『活惚れ』と2号店『オ山ノ活惚レ』の原価率は約35%、赤坂の新店はより良い食材を使うため、約40%と高い。
例を挙げると、同じ黒毛和牛でも前者はサーロインを使用、後者はより高価なフィレ肉を用いる。全店で扱う魚介類は、松永氏が独立前に修業した老舗鮮魚卸・海鮮居酒屋『魚真』が仕入れ先だが、その中でも赤坂用に「『魚真』さんにお願いしてワンランク上の物を用意してもらって買います。朝茹での毛ガニをほぐして提供したり、全てがいいものです」と松永氏は語る。
業界を揺るがすポテンシャルが、港区の大箱店舗にはある!
なお、メニューの「黒毛和牛のフィレ肉ステーキ」はコストが高いため、松永氏曰く「儲けはほとんどない」。その端材を「和牛切り落としカレーライス」に転用するなど、他店同様のロス削減や原価率のバランスを取る施策に取り組む。非公開の料理単価は450~5,800円と幅広く、客は小ポーションで楽しめるから平均8~12品の多皿を頼み、総体的に単価が膨らむわけだ。さらに赤坂という特殊な土地柄、日常的に1本30,000円程度のクラシックワインが出るという……。
メニュー表に値段表記がないと聞けば、「本当は正当な価格なのか」と勘繰りたくなる方もいるかもしれないが、至極真っ当な商売をしている。いや、内装費や人件費、材料費のコストを考えれば、サービスが良すぎるのかもしれない。
松永氏の頭の片隅には、今後の海外進出や新業態開発の構想がある。しかし、まずは「僕の中では港区で大箱を成功させることを考えています。この一年で、自分の中で決めた売上目標を達成したい。コロナ以降、大箱は飲食店経営者に敬遠されがちです。しかし成功すれば、業界に一石を投じられるぐらいのポテンシャルを持っている店をつくったと思っているので」と、新店に全精力を注ぐ。
「大人を相手に商売をしているのに、SNSに頼ったら本末転倒だから」と集客手段は基本、口コミのみ。上質を知る大人の満足度を高め、地道に種をまき続ける。
『赤坂 港かっぽれ』
住所/東京都港区赤坂5-5-18 auspice赤坂2階
電話番号/03-6277-6090
営業時間/17:30~L.O.24:00
定休日/不定休
坪・席数/50坪・30席(テーブル17席、カウンター13席)
